ふしぎ観測

自動ドア、なんでわしの前だけ開かんのじゃ?センサーの正体を暴く

2026年9月29日 By NTM Editorial
#自動ドア#センサー#JIS規格#バリアフリー#赤外線
aiko
aiko

さっきコンビニ入ろうとしたら、自動ドアがわしの前だけ開かんかったんじゃ! 横におった兄ちゃんの前ではちゃんと開いとったのに、わしだけ突っ立って顔面から突っ込みかけたぞ。あれ壊れとったんか?

sa-tan
sa-tan

壊れてはいないと思います。実は自動ドアの多くは「人」そのものを見ているわけじゃなくて、床に当てた近赤外線が跳ね返ってくる量の変化を見ているだけなんです。aikoさんの服装や動き方が、たまたまその「変化」を作りにくい組み合わせだった可能性がありますよ。

「人を見ている」わけではない。床の反射光量の変化を見ているだけ

自動ドアが人の姿かたちを画像として認識し、「これは人間だ」と判断して開いていると思っている人は多い。だが実際の仕組みはもっと即物的だ。ナブコ自動ドア(ナブテスコ)の解説によれば、自動ドアの起動センサーには「光線反射方式や電波方式、タッチ方式」など複数の検知方式があり、用途に合わせて選ばれている。現在の主流は、ドアの前方の床に向けて目に見えない近赤外線を照射し、床からの反射光の量がどれだけ変化したかを読み取る「光線反射方式」だ。人の輪郭を認識しているのではなく、「さっきまでの床の反射量」と「今の反射量」の差分だけを見ている。

この仕組みを裏側から証明する出来事が、2026年にウェブメディア QuizKnock の取材で明らかになった。自動ドアに認識されず立ち往生することが多いという著者がナブテスコ担当者に取材したところ、「黒い服や毛足の長いモコモコした服は、光を反射しにくく、検知されにくい場合があります」との回答を得ている。取材時の著者は黒いコートに黒髪という組み合わせで、センサーからはほぼ「透明人間」に近い状態だったという。加えて、絨毯敷きの床では反射率がさらに下がることも同担当者から説明されている。つまり自動ドアにとって重要なのは「そこに人がいるかどうか」ではなく、「反射光量が十分に変化したかどうか」でしかない。

NTM ふしぎ観測ファイル

自動ドアは「人」ではなく「反射光の変化」を見ている

目の前に立っても開かないことがあるのは、故障ではなく検知の原理そのものに理由がある。JIS規格と業界団体の役割分担まで含めて、自動ドアの「開く/開かない」の条件を辿る。

国産自動ドア第1号機の設置年 1956年
JIS A 4722(自動ドアの安全規格)制定 2017年3月
同規格の改正(バリアフリー対応追加) 2022年9月
バリアフリートイレ用ドアの検知センサー高さ 500〜600mm / 150〜200mmの二段

主流は「光線反射方式」

床に近赤外線を当て、跳ね返る量の変化を検知する方式。人の形は見ていない。

開ける係と挟まない係は別物

起動センサーとは別に、閉まる動きを止める補助センサーの搭載は業界団体が上乗せで推奨している。

一段の高さでは拾えない対象がいる

車椅子の足元や小さな子どもは、大人の胴体を想定した高さのセンサーからは見落とされうる。

規格は70年かけて後から追いついた

自動ドア自体は1956年からあるが、安全性を包括的に定めたJIS規格は2017年に初めて制定された。
NT Media 結論
では、なぜ「黒い服だと開かない」という体験が生まれ、規格はそれをどこまで拾えているのか。
aiko
aiko

人を見とるんやのうて、光の跳ね返りだけ見とるんか。そんな適当な判定で毎日何百万人も通しとるって、逆にすごいのう。……ってことは、床が濡れとったり日差しが強かったりしても、変な動きするんとちゃうか?

sa-tan
sa-tan

鋭いですね。実際、雨で濡れた路面や強い日差しの反射が誤作動の原因になることは、自動ドアの保守を手がける事業者の解説記事でもたびたび指摘されています。ただ、今aikoさんが気にしているのは逆側、「開くべきなのに開かなかった」ケースですよね。それは反射光量が「十分に変化しなかった」場合に起きます。

黒い服・濃い髪・絨毯──「反射しない」条件がそろうと透明人間になる

近赤外線を使う光線反射方式の弱点は、色や素材によって反射のされ方が大きく変わることにある。黒や濃い色の生地、毛足の長い起毛素材は近赤外線を吸収しやすく、反射光の変化が小さくなる。前述のナブテスコ担当者への取材でも、黒いコートと黒髪という組み合わせが「検知されにくい」条件として名指しされていた。逆に、取材した著者が光沢のある服やスパンコール付きの服に着替えたり、明るい色の服に変えたり、腕を振って動きを大きくしたりすると、ドアはスムーズに反応するようになったという。

条件起きていること出典
黒・濃色の服/毛足の長い素材近赤外線を吸収し、反射光の変化が小さくなるQuizKnock(ナブテスコ取材)
濃い髪色服だけでなく髪の色も反射率に影響するQuizKnock(ナブテスコ取材)
絨毯敷きの床床自体の反射率が下がり、変化がさらに検知されにくくなるQuizKnock(ナブテスコ取材)
雨天・強い直射日光屋外の自然光そのものが反射条件を乱し、誤作動や感度低下につながる自動ドア保守事業者の解説記事

対策としてナブテスコ担当者が挙げていたのは、光沢のある服を選ぶこと、明るい色に変えること、そして腕を振るなど動きを大きくして進入することだった。いずれも「反射光をより大きく変化させる」という一点に集約される、身も蓋もないが理にかなった対処法だ。

aiko
aiko

黒コートに黒髪はアウトって、わしより黒いもんおるまいて……って、それ髪や服の色で人を選別しとるようなもんやないか。なんか不公平な気がするぞ。

sa-tan
sa-tan

不公平というより、設計の割り切りなんです。実は自動ドアには「開ける係」の起動センサーとは別に、「挟まない係」の補助センサーを付けるかどうかという線引きがあって、そこは国の規格と業界団体とで基準の厳しさが違うんですよ。

開ける係と、挟まない係は別物──JISと業界団体で基準の厚みが違う

自動ドアの安全性は、2017年3月に制定されたJIS A 4722(歩行者用自動ドアセット−安全性)という規格で定められている。引き戸だけでなく開き戸・回転ドア・折り戸・バランスドアまで、電気で駆動する歩行者用自動ドア全般を対象に、製品設計から保全点検までの全プロセスを対象にした規格だ。

この規格の中でも役割が分かれているのが、ドアを開ける合図を出す起動センサーと、閉まる途中の人を検知して衝突や挟み込みを防ぐ補助センサーだ。自動ドア専門業者フルテックの解説では、補助光電センサー(開口部での立ち止まりを検出し、ドアを開放位置で止めて衝突を防ぐ装置)は全国自動ドア協会(JADA)が推奨している対策であり、JIS A 4722そのものが必須として求めているわけではない、と説明されている。つまり「国の規格としての最低ライン」と「業界団体が独自に上乗せしている推奨ライン」が別のレイヤーとして存在している。

JIS A 4722(国の規格・最低ライン)
電気駆動の歩行者用自動ドア全般(引き戸・開き戸・回転ドア・折り戸・バランスドア)を対象に、駆動部・起動センサー・保護方策の基本要件を規定。2017年3月制定、2022年9月にバリアフリー対応を追加改正。
全国自動ドア協会(JADA)の推奨(業界の上乗せ)
補助光電センサーの設置など、JISが必須にしていない項目を独自に推奨。設置するかどうかは施主・施工業者の判断に委ねられる。
aiko
aiko

国の基準はギリギリのラインで、業界団体が「もうちょい安全にせえ」って上乗せしとるんか。……それ、車椅子の人とか、わしより背が低い子どもにも関係する話とちゃうか? センサーの高さ的に見落とされたりせんのか?

sa-tan
sa-tan

まさにそこです。2022年の改正で、車椅子使用者用トイレの自動ドアには、高さの違う二段のセンサーを付けることが決まりました。一段だけだと、見えない範囲が出てしまうからなんです。

なぜ「同じ人」でも高さで見え方が変わるのか──車椅子用トイレの二段検知

JIS A 4722は2022年9月の改正で、車椅子使用者用便房用自動ドアセットおよび一般便房用自動ドアセットの個別要求事項を新たに追加した。ナブコ自動ドアの解説によれば、この改正で定められた検知保護装置(光電センサー)は、垂直方向に少なくとも2つ設置し、それぞれ床面から500mm〜600mmおよび150mm〜200mmの高さに配置することとされている。1本の光線だけでは、立っている大人の胴体は拾えても、車椅子のフットレストや小さな子どもの体は見落とされる可能性があるためだ。

500〜600mm
上段のセンサー高さ。立っている人の腰まわりや車椅子利用者の上半身の動きを捉える範囲
150〜200mm
下段のセンサー高さ。車椅子のフットレストや小さな子どもなど、上段だけでは拾えない範囲を補う

一段のセンサーは「平均的な大人が立っている」という前提でしか検知の網を張れない。その前提から外れる体格・姿勢・移動手段は、規格が更新されるまで文字どおり検知の範囲外に置かれてきたことになる。

Zash
Zash

基準ができたのは前進だ。ただ現場を見てきた身で言うと、この改正はあくまで新設や更新のタイミングで効いてくる話で、古い建物の便房ドアが自動的に二段検知へ切り替わるわけじゃない。車椅子の客がセンサーの手前で止まって「また今日もか」という顔をするのを、俺は何度も見てきた。

aiko
aiko

基準が直っても、建物そのものが古いままなら意味ないってことか……。それ、新しい店が増えるのを待つしかないんか?

1956年、大阪見本市から70年──「気配」を測る技術は後から規格に追いついた

自動ドアそのものの歴史は、規格よりずっと古い。ナブコ自動ドア(ナブテスコ)の社史によれば、日本国産の建築用自動ドア第1号機は1956年に大阪見本市へ出品された空気圧式の開き戸用自動ドアエンジンで、当時の日本エヤーブレーキ(現ナブテスコ)本社の西玄関に設置された。翌1957年には大阪ドアーエンヂン(現ナブコドア)が創業し、事業として本格化している。

1956年
国産自動ドア第1号機(空気圧式)が大阪見本市に出品。日本エヤーブレーキ本社西玄関に設置される
1957年
大阪ドアーエンヂン(現ナブコドア)創業。自動ドアが事業として本格化
1989年
マイコン制御の反射式センサー「NH-30パルサーチ」発売。現在主流の光線反射方式の系譜がここで実用化
2017年3月
JIS A 4722(歩行者用自動ドアセット−安全性)制定。安全性を包括的に定める規格が初めて成立
2022年9月
同規格を改正。車椅子使用者用便房用自動ドア・一般便房用自動ドアの個別要求事項と、子どもへの配慮に関する要求事項を追加

自動ドアが「開く・開かない」を判定する原理は1989年のマイコン制御センサーからほとんど変わっていない。変わったのは、その原理が誰を見落としがちかという点に規格側が気づき、2022年になってようやく高さという軸で穴を塞ぎ始めたことだ。技術そのものの進化よりも、「誰の体を測る前提にしているか」という設計思想の見直しの方が、規格の歴史としては遅れてやってきた。

関連: 「開かずの踏切」はなぜ残るのか。立体交差化の費用負担の構造 関連: エスカレーターの片側空けはいつ始まったか。安全側の主張と慣習の距離

aiko aikoが飲み込んだところ

要するに、あの自動ドアはわしを無視しとったんやのうて、わしの黒っぽい格好が「反射の変化」を作れんかっただけなんじゃな。……そういえば昔、雪山で真っ黒のウェア着とって、遭難信号の反射板が全然光らんで焦ったことがある。見た目で「見つけてもらえるかどうか」が変わるんは、自動ドアも遭難も一緒なんじゃのう。

NTM ニュース整理

規格が追いつくまでの「見落とし」の期間をどう見るか

自動ドアは規格が定めるより先に街に立っていた。1956年の第1号機から2017年の包括規格まで60年、そこから車椅子用トイレの検知範囲が二段になるまでさらに5年かかっている。規格の遅れそのものを責めるより、この記事で拾いたかったのは「規格ができるまでの間、誰が検知の網からこぼれ続けていたか」という順番の話だ。取材で名指しされたのは黒い服の人だったが、同じ構造は身長や体格、移動手段が「標準」から外れる人にも及ぶ。便利さの土台は、想定していなかった体を後から数え直す作業の積み重ねでできている。

the NTM Core Engine 参考文献・検証プロセス
S 95pt
PENDING Audit PENDING_MANUAL_REVIEW
2 一次情報
0 二次情報
参考文献・検証ログ 9件
  1. QuizKnock「自動ドア、私のときだけ開かない!悲しいので攻略法を取材してみた」(ナブテスコ取材)
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  2. ナブコ自動ドア「自動ドアの仕組み」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  3. ナブコ自動ドア「JIS A4722の解説」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  4. ナブコ自動ドア「JIS A4722の解説|バリアフリートイレ用自動ドアの安全対策」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  5. ナブコ自動ドア「NABCOの歴史」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  6. 全国自動ドア協会(JADA)公式サイト
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  7. 自動ドアのフルテック「JIS規格で安心!自動ドアの安全性を高める」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  8. e-Gov法令検索「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」
    一次情報 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  9. 国土交通省「建築物におけるバリアフリーについて」
    一次情報 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
Score Breakdown 95pt
Traceability 35/35
本文から根拠へ辿れる度合い
Diversity 25/25
出典の広がり
Evidence 25/25
根拠の強さ
Domain Bonus 10/15
一次資料・公的資料の補強
the NTM Core Engine review note

参照は 9 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。

制作の流れ
STEP 1

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参照 9 本。一次情報 2 本 / 二次情報 0 本を当てて、本文の芯を固める。

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更新・訂正履歴 更新 1 / 訂正 1

更新履歴

  • 2026-09-19: 初稿作成(自動起稿レーン・装填在庫)

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  • 現時点で訂正はありません。

参考資料