ふしぎ観測

コンビニのおでん、最近レジ前で見かけんくなった気がするんじゃが? 「儲からないから」を具体的な数字で追ってみた

2026年10月3日 By NTM Editorial
#コンビニ#おでん#食品ロス#フランチャイズ#季節商品
aiko
aiko

なあなあ、さっき近所のコンビニ寄ったら、レジ前にあったはずのおでんの鍋が無かったんじゃけど。もう時期が終わったんかのう? それとも気のせいか?

sa-tan
sa-tan

時期の問題もありますけど、それだけじゃないんです。ファミリーマートは2019年まではほぼ全店でおでんを扱っていたのに、2021年の調査では提供店は全国約1万6000店のうち約2割まで落ちています。「気のせい」じゃなくて、本当に減っているんですよ。

おでんが売ってる期間、実は思ったより短い

コンビニのおでんは通年商品ではない。例年、9月半ば前後から販売が始まり、2月いっぱいで終える店が多い。2025年はセブン‐イレブンが9月30日から販売を開始している。終了時期には地域差もあり、暖かくなるのが早い九州は東北・北海道より早めに撤収する傾向がある(macaroni「コンビニおでんはいつからいつまで売ってる?」)。

NTM ふしぎ観測ファイル

コンビニおでんの「営業期間」は約5カ月半

販売開始から終了まで、そしてピーク月まで。まず期間そのものを数字で押さえる。

販売開始の目安 9月中旬〜下旬
販売終了の目安 2月末
コンビニでの需要ピーク月 9月
外食・専門店の需要ピーク月 12月

開始日はチェーンで違う

2025年はセブン‐イレブンが9月30日開始。店舗オーナーの判断で通年扱う店もある。

終了は地域差がある

九州は東北・北海道より暖かくなるのが早く、撤収も早い傾向。

コンビニと外食でピークがズレる

コンビニのおでん需要は9月がピーク。外食・中食全体では12月がピークで、コンビニだけ先行して盛り上がる。

それでも「時期」だけでは説明しきれない

同じ9月でも「置く店」と「置かない店」に分かれる。期間の外側にある条件を見ていく。
NT Media 結論
期間だけ見れば毎年同じサイクルに見える。だが「今年は置いていない」という店が増えているのは、期間とは別の理由による。
aiko
aiko

9月開始で2月終わりって、思ったより短いんじゃな。半年もないってことか。でもさっきの「2割まで減った」ってのは季節の話とは違うじゃろ?

sa-tan
sa-tan

はい、そこが今回の本題です。「今年はまだ早い」とかじゃなくて、その店がもうおでん自体をやめているケースが増えているんです。理由は現場の負担にあります。具材ひとつひとつの扱いから見てみましょう。

具材ごとに「置ける時間」が数時間しかない

おでんは煮込んだら終わりではない。具材ごとに販売可能な目安時間が決められていて、経過した具材は廃棄処分になる。その時刻は記録することになっている(財経新聞「コンビニのカラクリ(3) おでんの手間は並みじゃないのに、煮込んだ頃には廃棄が迫る!」)。

つみれ

3時間

こんにゃく

5時間

大根

8時間

具材ごとに「消費期限」が別々に付いている、と考えるとイメージしやすい。

弁当やおにぎりのように「販売期限を1つ守ればいい」商品と違い、おでんは鍋の中の具材の数だけ時計が動いている。つみれは3時間、こんにゃくは5時間、大根は8時間で入れ替え対象になり、店員はそれぞれの投入時刻を把握しておく必要がある。仕込みや補充、つゆの温度管理まで含めると、調理と容器の清掃だけで1時間半から2時間ほどかかるとされる(オトナンサー「なぜ『おでん』販売をやめるコンビニが増えているのか」)。

aiko
aiko

つみれ3時間て、朝仕込んだら昼過ぎにはもう入れ替えの時間ってことじゃろ。それを一日中ずっとやり続けるんか……。

廃棄コストは本部と加盟店、どちらが多く払うのか

時間切れで廃棄になった具材の費用は、誰が負担するのか。コンビニ会計では、この「廃棄ロス」の負担割合が長く論点になってきた。セブン‐イレブン・ジャパンは2009年6月、公正取引委員会から「加盟店に対する見切り販売の制限」で排除措置命令を受けたのをきっかけに、廃棄ロス原価の15%を本部が負担する新たな加盟店支援策を発表した(セブン‐イレブン・ジャパン「加盟店様をバックアップする新たな支援策について」2009年6月23日)。裏を返せば、残りの85%は今も加盟店側の負担ということになる。

本部が負担する分

15%

2009年、公正取引委員会の排除措置命令を受けて新設された支援策。それ以前は基本的に廃棄ロスの全額が加盟店負担だった。

加盟店が負担する分

85%

つみれ・こんにゃく・大根……時間切れで廃棄した具材のコストは、この割合で各店舗の経営を圧迫する。

aiko
aiko

えっ、85%て、廃棄した分のほとんどを店が被っとるってことじゃろ。それ、仕入れ頑張れば頑張るほど廃棄リスクも増えるだけなんじゃないんか?

sa-tan
sa-tan

その通りです。だから経営判断としては「売れ残るリスクの高い商品を、そもそも置かない」という選択が合理的になりやすいんです。おでんは具材ごとに廃棄タイマーが動く商品なので、このリスクが特に高いんですよ。

1日に何個売れば元が取れるのか

具材の管理コストと廃棄負担を踏まえると、おでんは「1日にどれだけ売れれば採算に乗るか」という損益分岐の問題になる。目安として挙げられているのは1日100個という数字だ。来店客の購入数は1人あたり4〜5個が多いとされ、これは1日あたり20人程度がおでんを買う計算になる。ただし実際には、シーズン中に毎日100個以上を売り続けている店舗はそれほど多くないという(オトナンサー「なぜ『おでん』販売をやめるコンビニが増えているのか」)。

BREAKEVEN CHECK

1日の販売個数と採算の目安

❌ 60個調理・清掃・具材管理の手間に対して、明らかに赤字圏。人件費すら回収しづらい
△ 80個目安の100個には届かず、廃棄コストの85%負担が重くのしかかる水準
○ 100個一般に言われる採算ラインの目安。来店客20人前後がおでんを買う計算
◎ 120個ここまで売れて初めて手間に見合う——が、シーズン中これを毎日続けられる店は多くない

日々の仕込みと具材ごとの時間管理に1.5〜2時間をかけ、それでも100個に届かない日が続けば、廃棄コストの85%負担がそのまま店の収支を削っていく。人手が足りない店舗ほど、この手間のかかる商品から先に撤退する動機ができる。

実際どこまで減ったのか、時系列で追う

「感覚として減った気がする」ではなく、実際に何が起きたのかを時系列で並べる。

2019年まで
ファミリーマートはほぼ全店でおでんを取り扱っていた
2019年2月
横浜市内のセブン‐イレブン店舗で、アルバイト店員がおでんの白滝を口に入れて吐き出す動画を投稿し炎上。撮影に関わった2人が解雇された(J-CASTニュース)
2021年11月
日本経済新聞の調査で、ファミリーマートのおでん提供店は全国約1万6000店のうち約2割(約3800店)まで縮小。ローソンは約4割と報じられた(日本経済新聞「コンビニおでん、人手不足で激減」)
2024年2月
東京・新宿周辺の13店舗を調べた調査で、「レジ前のおでん鍋」を置く店が1軒もなかった。多くはカップや袋詰めの調理済みおでんに置き換わっていた(ロケットニュース24)

2019年の炎上騒動は、衛生面への不安を後押しした一因として挙げられることが多いが、日本経済新聞の報道が明確に挙げているのは人手不足と新型コロナウイルス禍だ。具材ごとの時間管理という手間のかかる作業を担う人員そのものが、コロナ以降さらに確保しづらくなった。レジ横の鍋自体が消え、代わりに工場で調理済みのカップ・袋入り商品に切り替える店が増えたのは、この2つの流れが合わさった結果と見てよさそうだ。

Zash
Zash

数字だけ見れば「割に合わないなら本部主導でやめればいい」で終わる話だ。だが実際に鍋を仕込んで、具材ごとの時間を確認して、廃棄を記録して……ってやってるのは、本部じゃなく個々の加盟店とバイトなんだよな。手間のかかる商品が減るのは合理的な判断だが、その手間を最後まで背負っていたのが誰だったかは、鍋が消えた後も覚えておいていい。

市場規模そのものが、毎年縮んでいる

個別チェーンの取扱店舗数だけでなく、市場全体の金額でも縮小は続いている。矢野経済研究所の調査(「コンビニエンスストア」各年度版)によれば、おでん市場規模(メーカー出荷金額ベース)は次のように推移している。

年度市場規模前年度比
2019年度563億円100.9%
2020年度536億円95.2%
2021年度518億円96.6%
2022年度495億円95.7%

出典:矢野経済研究所「コンビニエンスストア」各年度版(ゆいマーケメディア経由で数値を確認)

3年連続で前年度を下回っており、縮小は一時的な落ち込みではなく傾向として続いている。さらに追い打ちをかけているのが原材料価格だ。2023年7月時点の卸売価格は、大根が1kgあたり47円(前年同月比174.5%)、こんにゃくが236円(同109.5%)、ちくわが822円(同106.1%)と、いずれも前年を上回っている(農畜産業振興機構・日本こんにゃく協会・全国すり身協会の統計を基にしたゆいマーケメディアの整理)。手間がかかる商品の仕入れ値まで上がれば、「置かない」という選択がさらに合理的になる。物価そのものが家計にどう効いているかは『値上げ慣れ』が危険な理由でも扱っているが、おでんの縮小はその一断面でもある。

aiko
aiko

時間管理、廃棄の負担、採算ライン、原材料の値上がり……全部が「置かない方が楽」の方向に積み重なっとるんじゃな。

sa-tan
sa-tan

どれか1つなら乗り越えられたかもしれませんが、今は同時に効いているので、鍋が消える流れの方が自然になっているんです。

aiko aikoが飲み込んだところ

要するに、あの鍋、店ごとに「今日は元が取れるか」を毎日計算されながら置かれとったんじゃな。……わしも夏休みの宿題、最初の3日で終わらせるか最後の3日で泣きながらやるかで、労力とやる気の帳尻がずっと合わんかったの思い出したわ。

NTM ニュース整理

「季節商品」の外側にある帳簿の話

おでんを扱うなら、普通は具材の組み合わせや温め方の話になる。今回あえて販売可能時間・廃棄コストの負担割合・1日の採算ラインを追ったのは、毎年目にする光景の裏に、公開資料の数字だけで追える帳尻合わせがあったからだ。この帳尻合わせは、鍋が出ている間はほとんど誰の目にも触れない。

関連: 自販機、なんでこんなに多いんじゃ?「治安がいいから」で片付けると見えなくなる話


きっかけは「そういえば最近見ないな」という個人的な違和感でした。調べてみたら、本部と加盟店の廃棄コスト負担割合まで、企業の公式資料にちゃんと書いてありました。

ソース

参照した資料

販売期間・具材ごとの時間管理・廃棄コストの負担割合・店舗数の推移・市場規模のデータを、それぞれの一次情報・報道で確認しています。

the NTM Core Engine 参考文献・検証プロセス
S 85pt
PENDING Audit PENDING_MANUAL_REVIEW
0 一次情報
1 二次情報
参考文献・検証ログ 9件
  1. macaroni「コンビニおでんはいつからいつまで売ってる?」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  2. 財経新聞「コンビニのカラクリ(3) おでんの手間は並みじゃないのに、煮込んだ頃には廃棄が迫る!」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  3. オトナンサー「なぜ『おでん』販売をやめるコンビニが増えているのか」
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  4. セブン‐イレブン・ジャパン「加盟店様をバックアップする新たな支援策について」2009年6月23日
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  5. J-CASTニュース
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  6. 日本経済新聞「コンビニおでん、人手不足で激減」
    二次情報 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  7. ロケットニュース24
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  8. ゆいマーケメディア経由で数値を確認
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
  9. NPD Japan / Circana「おでんのピークは何月? コンビニのシェア減少に影響か」2018年10月17日
    分類保留 監査保留 最終参照: PENDING_MANUAL_REVIEW
Score Breakdown 85pt
Traceability 35/35
本文から根拠へ辿れる度合い
Diversity 25/25
出典の広がり
Evidence 25/25
根拠の強さ
Domain Bonus 0/15
一次資料・公的資料の補強
the NTM Core Engine review note

参照は 9 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。

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参考資料