この記事について
今日から始める新シリーズ「AI勢力図」のハブ記事。ここには毎月の数字は置かない。置くのは読み方——何を「勢力」と数え、何を数えないか、判定の5段階、扱う9陣営の分け方。実際の盤面(誰が今どの判定か)は、これから毎月出す個別のスナップショット記事に載る。このハブは固定で、上書きしない。
「いまAIで誰が勝ってるんですか」と聞かれたら、たいていの答えは2種類しかない。
株価か、話題量だ。
「NVIDIAの時価総額が」「OpenAIの評価額が」「Xで◯◯がバズった」。どれも本当のことだが、どれも半年後には別の会社の名前に入れ替わって終わる。数字の出どころが感情と期待だからだ。
えっ、勢力図いうなら、株価とか時価総額を見るのが一番わかりやすいんじゃないんか? みんなそこ見とるじゃろ。
わかりやすいけど、それだと話題になった会社が勝っている会社になってしまうんです。株価は「この先どうなりそうか」という期待の値段で、実際に何を用意できたかとは別物なんです。
だから、このシリーズは別のものを数える。各陣営が公の場で言った数字が、期限までに実現したかどうかだ。地味だが、これは記録が残る。株価のように毎日動かないし、話題量のように盛り上がりで水増しされない。
「勝っている」を株価で答えるのをやめる理由
このシリーズが検証する仮説は1つ。
各陣営の勢力は、公言した数値目標が期限内に満たされたかでよく説明でき、報道の熱量とは対応しない。
手持ちの材料は、ゼロから始めるわけではない。すでにthe NTMには、この仮説を裏付ける記事が並んでいる。
直近の実例がDeepSeekと価格競争の記事だ。「安い側が勝つ」という単純な構図を期待した読者に対して、実際に起きたのは先に値上げを予告したのは安い側だったという、話題の予想とは逆の結末だった。話題量と実績がずれる——このシリーズが月次で追いたいのは、まさにこの種のずれだ。
「どのモデルが賢いか」も扱わない。ベンチマークの点数は、各社が自社に有利な条件で測っていることが多く、外部からの再現検証が追いついていないケースが繰り返されてきた(検証は暴落の翌日に始まった)。技術の優劣は、the NTMの外の専門メディアに任せる。ここで追うのは技術ではなく、その技術を持つ側の言動だ。
何を数え、何を数えないか
公言の到達度を追うと決めても、「公言」を広く取りすぎると、毎日何かが起きているように見えてしまう。線を引く。
え、ベンチマークのスコアは使わんのか? 一番わかりやすい「強さ」の物差しじゃと思うんじゃが。
わかりやすく見えるのが問題なんです。既に検証した記事で、査読を通ったベンチマークが実は少数派で、多くは各社が自社の条件で測った数字だと確認しています。わかりやすい数字と、検証できる数字は別物なんです。判定の根拠にできるのは、後から第三者が確認できるものだけです。
判定の根拠にするのは、次の4点だけ。①公言の記録(誰が・いつ・どこで) → ②期限の到来 → ③到達点の観測 → ④それと報道の熱量が対応しているか。 ①〜③が土台で、④は仮説そのものの検証に使う。
判定は5段階。「観測不能」は逃げ道ではない
公言の到達度は、次の5つのどれかで表す。
判定は企業の良し悪しではない。「未達」は失敗の烙印ではなく、公言に対する到達度の表示にすぎない。株式の売買判断や、企業の総合評価として使わないでほしい。
問題は最後の「観測不能」だ。非公開の供給契約、実際に稼働している計算資源の量、提携の裏の条件——AI業界は記録が外に出ない部分が多い。ここを甘く使うと、「取材できませんでした」の居直りと区別がつかなくなる。だから2つの条件を切ってある。
- 同業他社が同じ種類の情報を開示しているなら、「観測不能」にはできない。 その場合は「非公開」という別の観測結果として、比較対象の他社名と一緒に本文に書く。
- ある陣営で、追跡中の公言の半数以上が「観測不能」になった月は、その月の記事で見出しレベルの論点として必ず立てる。 曖昧にして流せる枠ではない。
でも結局「観測不能」って、「調べきれませんでした」を言い換えとるだけになりゃせんか?
そこが一番危ないところなので、条件を切ってあります。同じ種類の情報を、同業他社が出しているのに当該陣営だけ出していない場合は、「観測不能」にはできません。それは開示していないという、また別の観測結果になります。
つまり「観測不能」を選べるのは、そもそも誰も出しとらんときだけ、ってことじゃな。
そうです。それと、ある陣営で「観測不能」が追跡中の公言の半分を超えたら、その月は必ず見出しで扱います。私たちの都合で黙っておける枠じゃないんです。
陣営はどう決まるか — なぜ数字を作らないNVIDIAも入るのか
「陣営」と呼ぶのは、モデルを作っている会社だけではない。位置の取り方には3つの層がある。
OpenAI / Google(Google DeepMind) / Anthropic / Meta / xAI / 中国勢(DeepSeek軸)
公言の中身は出荷時期と性能目標に寄る。
NVIDIA / Microsoft(販路を持つモデル提供側と両方を兼ねる)
どの陣営が勝っても需要になる位置。公言の中身は生産能力・供給契約・稼働開始時期に寄る。
SoftBank Group
公言の中身は調達額・投資枠・回収時期に寄る。
同じ「未達」でも、層が違えば意味が違う。だからスコアカードの表は層でグルーピングして並べる。
半導体を作っとるだけのNVIDIAが「陣営」なんか? 陣営いうたら、自分でAIを作っとる側のことじゃろ。
モデルを作らなくても、公言はできるんです。NVIDIAは決算のたびに供給計画の数字を出していて、その数字が外れると、モデルを作っている側全部が影響を受けます。NVIDIAを陣営から外すほうが、勢力図としては嘘になるんです。
じゃあNVIDIAの判定が動いたら、他の陣営の判定も引きずられて動くんか?
台帳では別々に扱います。ただ、供給が詰まった月は、他の陣営の深掘り章の中でその影響を材料として書くことになります。判定そのものを連動させることはしません。
初回の盤面は全9陣営を載せる。ただし毎月深掘りするのは、判定が動いた陣営か初登場の陣営だけ、最大3つまでに絞る。載っているのに深掘りしない陣営があるのは「見ていない」からではなく「今月は動いていない」からで、そこは月次記事側で毎回断る。
中国勢は当面「DeepSeekを軸にした中国の生成AI勢」に限定する。Alibaba・Baidu・Tencentなどをまとめて1つの陣営に入れると、「誰が言ったか」が特定できない公言が生まれてしまうためだ。個別に追跡価値のある公言を持つ企業が出てきたら、そのときに陣営を分ける。
このシリーズが踏み台にする記事
ゼロから始めるわけではない。型と、検証済みの前提がすでにある。
このシリーズの型そのもの。「約束vs現実」のスコアカード構造をそのまま借りる。xAI陣営は初回から盤面に載るが、この記事が既に採点済みのため、深掘り章は判定が古くなるまで立てない。
中国勢の「検証済みの前提」。訓練コストの読み違え・価格競争の顛末・ベンチマーク検証の遅れを、それぞれ既に1本ずつ確認済み。
これらの記事を、遡って「AI勢力図シリーズ」に組み込むことはしない。書かれた型が違うからだ。参照リンクとして使うだけで、タグも付け替えない。
このシリーズでは言わないこと
扱う範囲を狭くする代わりに、狭くした線をはっきり書いておく。
株価の動きを判定の材料にしたらあかんのか? 一番みんなが見とる数字じゃと思うんじゃが。
みんなが見ているからこそ危ないんです。株価は「この先どうなりそうか」という期待の値段で、公言が実現したから上がる、とは限りません。因果が逆に読めてしまうので、判定の根拠には使わないと決めています。材料として本文に書くのは構いませんが、判定を動かす理由にはしません。
需要側の話——「日本企業はAI導入で遅れている」といったテーマ——も射程外にする。AI導入率64カ国中57位やTSMCが熊本を選んだ理由は、供給側ではなく受け手側・誘致側の話であり、陣営の勢力ではない。年1回の特別回で扱う案はあるが、初年度は保留する。
編集後記 — この勢力図は、the NTM自身の材料でもある
最後に、書いておかなければならないことがある。
the NTMの記事は生成AIを使って書かれ、下書き・検証・画像生成のいずれも、この勢力図に載っている陣営の製品に依存している。この記事を含め、the NTMの原稿はAnthropic社のClaudeで書かれている。
「AIは過大評価だ」と書けば自分の道具を貶め、「AIは凄い」と書けば自分の依存先を宣伝することになる。どちらの誘惑も、構造として常にある。加えてAI関連の記事は検索需要が大きく、アクセスが収益に直結する以上、勢力図を煽り気味に書く誘因も常にある。
だからAnthropicは、初回のスコアカードに必ず載せる。依存先だから丁寧に扱うことも、依存先だから厳しく扱うこともしない——どちらも自己弁護の形が違うだけだ。判定は「観測不能」の付与条件、「遅延」と「未達」の切り分け、判定の根拠にする公言の選び方のいずれについても、他の陣営とまったく同じ手順を当てはめる。
自分が使っている道具に甘い判定を付けていないかは、感情ではなく公言と期限という外形基準に判定を縛ることで機械的に潰す。この記事がここまで、判定のルールをやけに細かく決めてきたのは、そのためだ。
結局このシリーズが数えるのは、「賢いか」じゃなくて「言ったことを用意できたか」じゃった。株価もベンチマークも、わかりやすいけど判定の根拠にはせん。9陣営を3層に分けて、「観測不能」には勝手に使えん条件を付けた。そんでthe NTM自身もAnthropicの道具を使っとる側じゃから、そこだけ甘くするのも厳しくするのも禁止。次の記事から、実際の盤面が動き出す。
このシリーズの構成
ai-power-map-YYYY-MM):その月の盤面。初回は2026年8月時点変化が無い月は、記事を出さない。それも含めて記録する。
参照ソース
Score Breakdown
参照は 9 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。
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参照 9 本。一次情報 0 本 / 二次情報 2 本を当てて、本文の芯を固める。
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更新・訂正履歴
更新履歴
- 2026-08-22: シリーズハブ記事を起稿。AI勢力図シリーズ第1弾(企画書: sites/the_ntm/docs/editorial/series/ai-power-map.md)。アイキャッチ・inline画像は未作成、初回スナップショット公開前に用意する。
訂正履歴
- 現時点で訂正はありません。