「AIの学習は著作権者の許可なんかいらん」ってニュースで見た気がするんじゃけど、なんで読売新聞とか朝日新聞は、Perplexityって会社に何十億円も請求して訴えとるんじゃ?矛盾しとらん?
そこ、実はほとんどの人が混同してるところなんです。「AIの学習」と「AIが作ったもの・使ったものの利用」は、条文からして別ものなんですよ。今日はその線引きを、文化庁の整理と実際の訴訟・摘発事例で具体的に追っていきます。
この記事について
本稿は文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月公表)と、その後の実例(2025年11月の千葉県警による全国初の摘発、読売新聞・朝日新聞・日本経済新聞のPerplexity AI提訴)を突き合わせ、「AI開発・学習段階」「生成・利用段階」「AI生成物の著作物性」という3つの局面で、日本の著作権法が何を許し、何を許していないかを整理する。個別の訴訟の最終的な勝敗を予測するものではなく、係属中の裁判の論点は係属中のものとして扱う。
AIと著作権、3つの局面で線引きが違う
「AIの学習は無許可でOK」という理解は、AI開発・学習段階(著作権法30条の4)に限った話。生成・利用段階には通常の著作権ルールが適用され、AI生成物にも条件付きで著作権が発生する。
① AI開発・学習段階
② 生成・利用段階
③ AI生成物の著作物性
④ 第三の場面:AI検索
「非享受目的」なら無許可でいい——著作権法30条の4の中身
文化庁「AIと著作権に関する考え方について」概要(2024年4月・文化審議会著作権分科会法制度小委員会)によれば、AIの開発・学習のように、著作物に表現された思想や感情を「享受」する目的を持たない利用行為(非享受目的の利用)は、原則として著作権者の許諾なく行えるとされている。これが著作権法30条の4で、平成30年(2018年)の法改正で新設された条文だ。
「享受」とは、閲読・鑑賞・実行など、作品を通じて知的・精神的な欲求を満たす行為を指す。AIが大量のテキストや画像から統計的なパターンを抽出して学習モデルを作る行為は、人間が作品を味わうことを目的としていないため、「非享受目的」に当たるという整理になる。
| 利用の種類 | 「享受」に当たる行為の例 | 30条の4が対象とする行為の例 |
|---|---|---|
| 文章の著作物 | 閲読すること | AIの学習データとして著作物を収集・複製すること |
| 音楽の著作物 | 鑑賞すること | |
| プログラムの著作物 | 実行すること | |
| 映画の著作物 | 鑑賞すること |
つまり「読む」「見る」「聴く」目的じゃなければセーフで、AIがデータとして飲み込むだけなら「読んでない」扱いになる、ってことか。じゃあAI開発会社は何をどれだけ集めても文句言われる筋合いはないんじゃな?
そこが早合点なんです、aiko先輩。「非営利目的」でも「研究目的」でも、享受する目的が少しでも混ざっていれば30条の4は使えません。それに、この条文には無視できない例外が2つあって、AI開発企業もそこは気にしています。
「無許可でOK」が効かない2つの抜け穴
例外の1つ目は特定のクリエイターを狙い撃ちした学習だ。文化庁の資料は、生成AIの基盤モデルに追加学習(ファインチューニング)を行う際、意図的な「過学習」によって特定クリエイターの創作的表現そのものを再現させることを目的に、その作品群だけを集めて学習データにする行為は、「非享受目的」の要件を満たさないとしている。「作風(アイデア)」が似ているだけなら著作権侵害にならないが、少数の作品しかない作家の場合、作風とほぼ同義に創作的表現が共通してしまうケースがあり、そこを意図的に狙う学習は30条の4の対象外になる。
例外の2つ目は著作権者の利益を不当に害する場合のただし書きだ。情報解析用に有償提供されているデータベースを、対価を払わずに複製して学習に使う行為や、robots.txtのような技術的な複製防止措置を回避してまで、将来販売予定のデータを収集する行為が典型例として挙げられている。
30条の4が適用される(原則OK)
- ウェブ上に公開された多様な著作物を、統計的な学習素材として幅広く収集する
- 特定の作家を狙わず、汎用的な基盤モデルの学習に使う
- 技術的な複製防止措置がかかっていないデータを、通常の方法で収集する
30条の4が適用されない(要許諾)
- 特定クリエイターの作品群だけを集めて、創作的表現が共通する類似物を出力させる追加学習
- robots.txtやID認証などの複製防止措置を回避して、将来販売予定のデータベースを収集する
- 海賊版と知りながら、そのサイトから学習データを収集する
海賊版と知ってて集めたらアウトなのは分かるけど、robots.txtって単なる「お断り」の張り紙じゃろ?あれ無視しただけで即アウトになるんか?
即アウトとまでは言い切れません。文化庁の整理は「技術的な措置を講じていること」+「将来そのデータベースが販売される見込みがあること」の両方から、市場との衝突が推認できる場合にただし書きが効く、という組み立てなんです。単に張り紙を無視した、だけでは終わらない話で、この論点はまさに今、新聞社とPerplexityの裁判で争われています。それは後半で扱いますね。
生成した後は「普通の著作権」——類似性と依拠性で決まる
学習段階の話とは別に、AIで生成した画像や文章をSNSに上げたり、複製物を販売したりする「生成・利用段階」は、通常の著作権侵害と同じ基準で判断される。既存の著作物との「類似性」(創作的表現が共通していること)と「依拠性」(既存の著作物をもとに作られたこと)の両方が認められ、かつ権利制限規定の対象外である場合に、著作権侵害となる。
侵害判定のチェックリスト
- ✅ 類似性:生成物に既存作品との創作的表現の共通性があるか
- ✅ 依拠性:既存作品をもとに作られたと言えるか(学習データに含まれていれば、通常は依拠性ありと推認される)
- ✅ 権利制限規定の対象外:私的使用など許諾不要の例外に当たらないか
- ❌ この3つが揃わなければ、既存著作物の著作権侵害にはならない
依拠性の立証は、既存の著作物が学習データに含まれているか不明な場合でも、「AI利用者がその著作物にアクセス可能だったこと」や「生成物との高度な類似性」から推認できるとされる。逆に、既存の著作物が学習データに含まれていたことが立証できれば、AI利用者が意識していなくても、通常は依拠性があったと推認される。
もう一つ大事なのは、事業者側の責任です。ある生成AIが侵害物を高頻度で生成すると分かっていながら抑止策を取らなかった場合、AI利用者だけでなく、AI開発事業者やサービス提供事業者も「規範的な行為主体」として著作権侵害の責任を問われる可能性がある、と文化庁の整理は明記しています。
つまり「AIが勝手にやった」は事業者側の言い訳にならんってことか。使う側だけが悪者にされる話じゃないんじゃな。
AIが作った絵にも著作権は生まれる——千葉県警の全国初摘発
「AI生成物」がそもそも著作権法の「著作物」に当たるかは、また別の問題として整理されている。文化庁の考え方では、人が指示を与えず「生成」ボタンを押すだけで作られたものは著作物に当たらないが、人が「創作意図」を持ち、具体的な指示や試行錯誤の積み重ねという「創作的寄与」を行ったと認められれば、AIを道具として使った著作物になり得る。指示・入力の分量、生成の試行回数、複数の生成物からの選択といった要素を総合的に考慮して、個別に判断される。
この整理を裏づける実例が、2025年11月に起きた。日本経済新聞の報道によれば、千葉県警は同年11月20日、神奈川県大和市の27歳の男性を著作権法違反(複製権侵害)の疑いで書類送検した。AI生成画像をめぐる著作権法違反の摘発は全国で初めてとみられる。
2万回超
被害者男性が生成AIに入力したプロンプトの回数
全国初
AI生成画像をめぐる著作権法違反の摘発
2025.11.20
千葉県警による書類送検
被害者の男性がStable Diffusionで生成した画像を、送検された男性が無断で複製し、自身が販売する電子書籍の表紙に使用した疑いがあるという。行政書士の視点からこの事案を解説したNota行政書士事務所の記事は、被害者が多数回にわたって指示や修正を重ねていたことから、千葉県警が画像に「創作的寄与」を認め、著作物として複製権侵害を構成したと整理している。
「ボタン一発」と「2万回プロンプトを打ち込んで直し続けた作業」を、法律が同じ扱いにしなかったってことだ。俺たちが現場で覚えてきたのは、道具が新しくなっても「手をかけたかどうか」は最後まで残る、ということだった。AI時代でも、その線は消えなかった。
新聞社 vs Perplexity——「学習」でも「生成」でもない第三の場面
ここまでの整理では説明しきれない争いが、2025年から日本で本格化している。AI検索サービス「Perplexity AI」をめぐる、新聞社側からの一連の法的アクションだ。
2025年8月7日
読売新聞グループ本社がPerplexity AIを東京地裁に提訴。日本経済新聞によれば、2025年2〜6月に読売新聞オンラインの記事11万9,467本を無断で取得・複製されたとして、約21億6,800万円の損害賠償を請求。
2025年8月26日
朝日新聞社と日本経済新聞社が共同でPerplexity AIを提訴。Impress Watchによれば、両社合計で44億円(各社22億円)の損害賠償を請求。robots.txtで拒否の意思を示していたにもかかわらず記事が収集されていたこと、引用元に社名を示しながら実際の記事と異なる内容を表示していたことを問題視した。
2025年12月1日
共同通信社と加盟社48社、毎日新聞社、産経新聞社が連名でPerplexity AIに抗議書を送付(Yahoo!ニュース=共同通信配信)。2024年8月ごろから約1年間、ニュースサイト「47NEWS」に数十万回のアクセスがあったと指摘し、記事の無断収集・複製と、誤った内容の回答生成による信用毀損を主張した。
2026年5月14日
朝日新聞・日経新聞とPerplexity AIの訴訟で、東京地裁にて第1回口頭弁論(AIフレンズの解説記事)。Perplexity側は請求棄却を求め、著作権法30条の4等を主な防御線として全面的に争う姿勢を示した。
このケースが「学習」の議論だけでは片づかない理由がある。文化庁の考え方は、検索拡張生成(RAG)の一部について、既存の著作物の創作的表現を出力させることを目的とするものは、AI学習データの収集と同列には扱えず「非享受目的」の要件を満たさないと明記している。新聞社側の主張は、まさにこの一線——AIが記事を「学習素材」としてではなく「その場でほぼ原文に近い形で読者に届ける代替品」として使っている、というところに置かれている。
なるほどのう。「学習は自由」って話と「検索のたびに記事をほぼそのまま読ませる」って話は、そもそも同じ棚に乗せる話じゃなかったんじゃな。じゃあこの裁判、どっちが勝つかまだ分からんのじゃな?
はい、係属中の裁判なので、ここで勝敗を予想するのは避けます。ただ確認できる事実として、文化庁の「考え方」自体が法的な拘束力を持つ文書ではなく、あくまで公表時点での小委員会の見解だということは押さえておく必要があります。判例・裁判例が積み上がるまでは、この手の境界線の裁判は今後も増えるはずです。
NT Media自身も、この線引きの外にいるわけではない
ここまで整理してきた話は、他人事として読める記事ではない。the NTMのようなウェブメディアの記事も、検索エンジンやAI検索の学習・要約対象になり得る。今回引用した新聞各社の主張——記事を無断で収集され、要約という形でほぼそのまま届けられ、広告収入につながるはずのアクセスが素通りされる——という構図は、規模の大小を除けば、ネット上に記事を出すあらゆる媒体が抱えるリスクと地続きだ。生成AIコンテンツの供給過多とアテンション・エコノミーの飽和を扱った既報や、AIが書いた記事の見分け方を追った記事も、同じ地続きの問題を別の角度から見ている。
同時に、the NTM自身も記事制作にAIを活用している。文化庁の整理が「学習は原則自由、ただし例外あり」「生成・利用は普通の著作権ルール」と線を引いたのは、AI事業者だけでなく、AIを使って発信する側・発信されたものを使われる側の両方に向けた整理でもある。批判の対象を「AI企業」や「Perplexity」に固定して終わらせず、この構造の中にどのメディアも部分的に立っているという自覚を持って読む必要がある。
「学習は自由」も「AIが作ったものは無権利」も、どっちも半分だけ正しくて半分は間違ってる。境界線を引くのは条文じゃなく、結局は具体的な事件の積み重ねだ。千葉県警の書類送検も、新聞社の訴訟も、まだ判例になりきってない。俺たちが今読んでるのは、まだ固まってないルールの途中経過だ。
参考文献・検証ログ
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参照は 7 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。
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更新履歴
- 2026-08-15: 初稿作成(自動起稿レーン・装填在庫)
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