2025年4月、トランプ政権が主要貿易相手国への追加関税を発動した。市場は数日で大きく揺れ、「NISA口座をどうすればいいのか」という問いが検索エンジンに大量に流れ込んだ。
あれから1年以上が経過した2026年春、貿易摩擦はまだ続いている。
現状のおさらい
米国は2025年4月に主要貿易国への関税引き上げを発動。日本株・米国株ともに急落局面があり、日経平均は一時的に数千円規模の下落を記録した。その後90日間の一部停止措置と交渉進展期待で部分回復したが、2026年5月現在も関税の全面撤回には至っておらず、市場のボラティリティは高い状態が続く。新NISA口座の含み損・含み益の状態は投資開始時期によって大きく異なる。
「売るべきか、持つべきか」——この問いに即答するのは難しい。ただ、答える前に確認すべき問いがある。
同じ「急落」でも、起因が違えば回復パターンも違う。
- 起因:円高急進 + 米景気後退懸念
- 日経最大下落:▲4,451円(▲12.4%)
- 翌営業日:+3,217円(+10.23%)
- 性質:流動性ショック、実体なし
- 起因:政策決定(関税引き上げ)
- 影響:複数回の波状的下落
- 交渉次第で反転もあり
- 性質:政策不確実性、長期化可能性あり
共通点:長期の株式インデックスは過去、いずれの暴落後も最終的に回復している(ただし期間は数ヶ月〜十数年と幅がある)
「今回の下落」と過去の暴落、何が違うのか
すべての急落局面が「同じ」ではない。違いを理解することが、冷静な判断の出発点になる。
流動性ショック型(2024年8月型)は、実体経済への直接打撃が薄い。投資家心理と為替の急変動が主因で、実際に翌日から急速に値を戻した。これは「暴落に見えたが、根拠が薄かったため戻りも速かった」ケースだ。
政策起因型(関税ショック型)は構造が異なる。政策が変わらない限り下落圧力が継続し得る。ただし「交渉・妥協・撤回」という変数が存在する点で、経済崩壊型(リーマン、ITバブル崩壊)とも違う。
確認すべき4つの問い
「今すぐ売るべきか」の前に、以下の4問に答えてみてほしい。
月の生活費×6ヶ月分が現金で確保されていれば、NISA口座は長期保有に耐えられる設計になっている。これが崩れていると「売らなければならない」状況になりうる。
S&P500の30年平均年率リターンは約10.1%(Morningstar調べ)。10年以上の時間軸があれば、歴史的には「持ち続けた方が良かった」局面の方が多い。5年以内に使う予定の資金は別の話。
「帳簿上の損失」は売るまで確定しない。ただし精神的ストレスが判断を歪めるなら、そのリスク許容度自体を見直す必要がある。損切りが「間違い」とは限らないが、根拠を持って決める。
「不安だから」「下がりそうだから」は売る理由にならない。「生活防衛費が足りなくなった」「投資方針が変わった」「リスク許容度を超えた」など、具体的な根拠を持って判断する。
新NISAの設計は「こういう局面」のために作られた
金融庁が新NISA制度を設計した意図のひとつは、「短期売買の誘惑に負けずに長期保有できる器を作ること」だ。
非課税期間が無期限。 旧NISAは最長20年の期限があったが、新NISAでは無期限保有が可能になった。これは「下落局面でも売らずに待てる」設計を制度が後押しする仕組みだ。
年間投資枠は使い切れなかった年の分は消える。 だが「売った後に枠が復活する」仕組みがある(翌年以降)。含み損の状態で損切りをしても、その分の枠は翌年から再利用できる。「枠がもったいない」という錯覚で保有を続ける必要はない。
- 非課税期間:無期限(旧NISAの期限切れ問題が解消)
- 売却後の枠:翌年以降に復活(売り時の自由度が高い)
- 損益通算:不可(これは制約——含み損確定の節税目的には使えない)
- 生涯投資枠:1,800万円(成長投資枠 1,200万 + つみたて枠 600万)
「それでも不安」なら——リスク許容度を測り直す
4つの問いに答えた後、それでも不安が消えないなら、そもそも「自分のリスク許容度がその投資額に合っていなかった」可能性がある。
含み損が生活への支障なくいられる水準に投資額を調整することは、「失敗」ではない。「自分に合ったリスクで長期保有できる体制を作る」ことが、制度を正しく使うことだ。
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関税ショック下で「今すぐ売るべきか」と問う前に、4つを確認する。①生活防衛費は別に確保されているか ②投資期間は10年以上あるか ③含み損が生活を脅かす水準か ④「なぜ今売るか」を言語化できるか。新NISAは非課税無期限・翌年枠復活という設計で、長期保有が有利になっている。関税ショックは政策起因の下落で、交渉次第で急反転もあり得る。判断する材料を揃えた上で、感情ではなく根拠で動くことが、制度を正しく使う唯一の方法だ。
世論の空気感
出典・参照
- 金融庁「NISA制度の概要」(公式)
- 日本取引所グループ「市場統計データ」
- S&P Global「S&P 500 Index Data」
- Morningstar「Mind the Gap 2024」(投資家リターンと運用リターンのギャップ調査)
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