この記事について(新NISAハブ)
本記事は、本誌の「新NISAハブ」シリーズの旗艦記事です。新NISA口座数2,696万(2025年6月末時点、金融庁)・累計買付59.3兆円・利用者の67.4%が年収500万円未満という事実を起点に、制度設計から「政府の3つの意図」を読み、老後・教育費・物価高・円安の「4つの不安」に対してNISAがどこまで解決策になるか/ならないかを一次データで仕分けます。続編として「老後2,000万円問題を原文から読み直す」「新NISAで暴落が来たらどうするか」の子記事を予定。
独自ファクトチェック・検証視点
制度データは金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果」の2024年12月末版・2025年3月末版・2025年6月末グラフを一次ソースとしました。政府意図は金融審議会 市場ワーキング・グループ(2019年)、資産運用タスクフォース(2023年12月)、内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン」(2023・2025改訂)を参照。批判的視座は野口悠紀雄・山崎元・藤野英人の公開論考を実在URL付きで整理。本誌独自の「4つの不安マップ」は構造整理であり、投資助言ではありません。編集後記で本誌自身が金融系広告市場の影響下にある構造についても明記しています。
2025年6月末時点で、日本の新NISA口座は2,696万口座に達した(金融庁『NISA口座の利用状況』2025年6月末時点グラフ)。成人の4人に1人が開設している計算になる。政府目標は2027年末までに3,400万口座。累計買付額は59.3兆円(2025年3月末時点、金融庁同調査2025年3月末版)で、2023年末からわずか1年3ヶ月で+24.3兆円(+69%)。そして、利用者の67.4%は年収500万円未満だ。
「富裕層の税制優遇」という語られ方がされがちな新NISAの実像は、実は中所得層・若年層が主役のムーブメントになっている。20代の投信保有者の86.1%が積立投資を使っている(投資信託協会『2024年投資信託に関するアンケート調査』)。
とはいえ、検索ワードとして「新NISA」と並んで上がってくるのは、「老後2,000万円問題」「教育費」「物価高」「円安」——つまり、人々はNISAそのものを知りたいというより、自分の不安の答えとしてNISAを検索している。
本稿は「どう始めるか」「どの商品を買うか」には踏み込まない。代わりに、制度設計から『政府の3つの意図』を読み、『4つの不安』に対してNISAが答えになる部分とならない部分を仕分ける。投資助言ではなく、判断のための物差しを提供する。
新NISA 3つの意図と4つの不安
制度は「貯蓄から投資へ」「社会保障縮小の代替」「資産運用立国」という3つの政府意図の合流点。そこに国民の4つの不安(老後/教育費/物価高/円安)がぶつかる。制度は一部に応え、一部には応えない。
意図①:貯蓄から投資へ
意図②:社会保障縮小の代替
意図③:資産運用立国
4つの不安マップ
数字で見る新NISA — 口座数と買付の勢い
まず制度の大きさを数字で確認する。数字を踏まなければ、どの意図も机上の話になる。
口座数の推移(金融庁の四半期調査ベース):
- 2024年12月末:2,560万口座(2024年12月末調査、前年比+20.5%)
- 2025年3月末:2,647万口座(2025年3月末調査、2023年末比+522万口座・+24%)
- 2025年6月末:2,696万口座(2025年6月末グラフ)
- 政府目標:2027年末 3,400万口座
買付額:
- 2024年単年:17兆0,448億円(前年比+49.5%。内訳は成長投資枠12.4兆円、つみたて投資枠4.9兆円)
- 累計:59.3兆円(2025年3月末、2023年末の約35兆円から+69%)
利用者の年収分布(2025年3月末):
- 年収500万円未満:67.4%
- 継続保有率:86.1%(つみたて投資枠は94.2%)
これは何を意味するか。「富裕層だけが使っている」言説は数字で否定される。中央値的な家計が、月数万円のつみたて投資を続けている。同時に、67.4%の層が投資枠の上限(生涯1,800万円)まで使い切るのは簡単ではない、ということでもある。
2,696万口座って、成人の4人に1人じゃの……。もう「一部の人だけ」じゃなくなっとるんじゃな。
そう。2024年1月の制度開始から1年半で、この規模まで拡大した。これは偶然ではなくて、制度設計と政策キャンペーンが同期している結果よ。金融庁の特設サイト、官邸の「新しい資本主義」、金融機関の販促、全部が同じ方向に押している。
で、ここが大事だ。「みんなが始めているから正しい」とは限らない。正しいかどうかは、自分の不安に対して制度が答えているかで決まる。数字の勢いと、自分の家計は別の話だ。
意図①:「貯蓄から投資へ」— 現預金50.9%を動かす20年計画
制度の意図を読む前に、マクロ背景を押さえる。
日本の家計金融資産は2,230兆円(2024年12月末、日本銀行『資金循環統計』)。その構成は:
- 現金・預金:50.9%(約1,135兆円)
- 保険・年金・定型保証:24.4%
- 株式等:13.4%
- 投資信託:6.1%
この「現預金比率50.9%」は、他国と比べて極端に高い。米国(約13%)、欧州(約35%)と比較すると、日本は貯蓄依存型の家計が主流だ。この構造を「リスク資産に動かしたい」というのが、20年以上前から続く国家目標である。
キーワードとしての「貯蓄から投資へ」は、2003年の小泉政権時代に金融庁が掲げたスローガン。以来、NISAの前身である一般NISA(2014年)、つみたてNISA(2018年)、そして新NISA(2024年)と、20年間同じ方向に制度が強化され続けている。
新NISAの設計(年間360万円・生涯1,800万円・無期限保有)は、この20年計画の到達点と見るべきだ。前身制度と比較すると、つみたて枠は3倍、成長枠は2倍、期間は無期限化。つまり「とにかく大きく長く」という方針が明確になった。
一次ソースで意図を確認したい読者には、以下を推す:
- 内閣官房『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版』 — 「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISAの抜本的拡充を図る」と明記
- 金融庁『資産運用立国実現プラン』2023年12月
- 金融庁『NISAの効果検証』税制EBPM専門家会合 2025年6月
20年もかけて「貯蓄から投資へ」って言い続けとったんか。なんでそんなに投資に動かしたいんじゃ?
理由は複数あるけど、最大のものは家計資産を成長の果実に与らせること。日本企業の株価が伸びても、家計の半分以上が現預金なら、国民は恩恵を受けられない。加えて、長期的にインフレで目減りする現金の割合を減らすという意味もある。これは経済政策として理にかなってはいる。
ただし「理にかなっている」と「全員にとって正しい」は別の話だ。リスク許容度の低い人、短期で使う予定の資金がある人、そもそも投資を理解していない人まで、政策のレールに乗せるのは乱暴だ。「貯蓄から投資へ」は国の話、あなたの話は別にある。
意図②:「社会保障縮小の代替」— 2019年『老後2,000万円問題』からの地続き
2つ目の意図は、より政治的な文脈を持っている。
2019年6月3日、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループは「高齢社会における資産形成・管理」と題する報告書を公表した(報告書本体PDF)。内容は淡々とした試算だが、一箇所が国政を揺るがした。
夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯で、月々の赤字は約5万円。30年で約2,000万円の不足が生じる
これがいわゆる「老後2,000万円問題」だ。当時の麻生金融担当大臣は「表現が不適切」として受取を拒否し、報告書は政治的に棚上げされた。しかし、試算のロジックそのものは撤回されていない。
5年後、同じ金融庁は「資産運用立国実現プラン」(2023年12月)と「新NISA」(2024年1月)を打ち出す。この時系列を並べると、政策のロジックは一貫している:
- 2019年:公的年金だけでは老後資金が足りないことを試算として提示
- 2019-2022年:政治的棚上げ、しかし制度設計は継続
- 2023-2024年:新NISA開始と「資産運用立国」で、自助努力の器を拡充
言い換えれば、「国家は公的年金の構造的縮小を事実上認めており、その穴を個人の資産運用で埋めることを期待している」という構図だ。これは批判ではなく、制度設計のロジックとして読める。
衆議院でもこの論点は質問主意書として提出されている(『新NISAの導入による影響に関する質問主意書』)。
つまり「国は年金だけじゃ足りないって認めとる」ってこと?それをNISAで埋めろって?
正確には「国はそうとは公式に言っていない」の。2019年の報告書は棚上げされた。でも、政策として実行していることは、その前提と矛盾しない。表で言わないが、裏のロジックは通っている。これは先進各国で共通して見られるパターンで、年金だけで老後をまかなう時代は終わりつつある、という認識が世界的にある。
問題は、この「自助努力の制度化」が、自助が困難な層にも等しく適用されることだ。年収300万円の人と800万円の人が同じ「1,800万円枠」を与えられる。枠は平等でも、使える余力は平等ではない。この非対称性は、政策として認識されているが、解決はされていない。
「老後2,000万円問題」って結局どうなっとるの?次回の子記事で原文読み直すって聞いたけど……。
本稿の続編で、2019年の報告書を丁寧に読み直して、2026年の現実と照らし合わせる予定よ。「嘘だった」「本当だった」という単純な二元論ではなく、試算の前提と現在のズレを見ていく。しばらくお待ちを。
意図③:「資産運用立国」— 運用業界を産業として強化する
3つ目の意図は、産業政策としての側面だ。
2023年12月13日、岸田政権下で「資産運用立国実現プラン」が公表された(金融庁公式)。内容は運用業界の構造改革で、以下のような項目が並ぶ:
- 国内運用会社の競争力強化(外資系との垣根を下げる)
- インデックスファンドの低コスト化促進
- アセットオーナー(年金基金など)のガバナンス強化
- 金融人材の育成と海外招致
この文脈で新NISAを見ると、運用業界に流れる資金のパイプラインとして設計されていることがわかる。NISA経由で買われる投資信託の信託報酬は運用会社の収益になり、売買を仲介する証券会社の手数料も発生する。「貯蓄から投資へ」の資金移動は、運用業界の成長と表裏一体なのだ。
ここで重要なのは、この意図が必ずしも悪ではないということ。運用業界が強くなれば、日本の企業年金・公的年金の運用パフォーマンスも改善しうる。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用規模は200兆円を超える。運用立国化は、年金制度の持続性にも寄与する可能性がある。
しかし、個人にとっての含意はやや違う。運用業界が強くなることと、個人投資家が損をしないことはイコールではない。信託報酬は運用会社の収益であり、投資家のコストである。大和総研のコラム(『新NISAの「裏技?」のような制度と「国内投資枠」新設の提案』長内智、2024年2月)は、この構造的な利益相反を婉曲的に指摘している。
要するに、わしらがNISAでファンド買うたら、運用会社はずっと手数料もらえるってことか。
それは投資信託の仕組みそのものなので、NISA固有の問題ではないわ。ただ、NISAは長期保有前提の制度だから、手数料は複利的に効いてくるのよ。年0.5%の信託報酬は短期では微々たるものだけど、30年だと累積で資産の約14%を削る計算になる。
ノーベル経済学賞のファーマやシャープも繰り返し言っているが、長期投資における最大の敵はコストだ。NISAで使う商品を選ぶとき、「どの国の株か」の前に「信託報酬はいくらか」を見るのが、実は最も効く判断基準になる。
野口悠紀雄氏は、この点を別角度から批判的に分析している(『「新NISA」は老後資金問題の解決策になりうるのか?』)。氏の論点は「1,800万円を3%で運用しても節税効果は限定的。損益通算を放棄するリスクも含めて、万能薬ではない」というもの。これも一理ある。
4つの不安マップ — NISAは何の答えになるか
ここまでの3つの意図を踏まえて、「4つの不安」に対してNISAがどこまで答えになるかを整理する。これが本稿の核心である。
不安①:老後資金(2019年『老後2,000万円問題』)
NISAの答え度:中〜高
NISAは長期保有前提の非課税口座なので、老後資金形成の道具としては理論的に適している。ただし、前提として「30年運用できる若い人」にとっての話。50代以降で始める場合、老後到達までの運用期間が短く、暴落リスクを吸収できない可能性がある。
加えて、1,800万円を満額使える家計は限定的。年収500万円未満が利用者の67.4%という事実は、多くの人が年間数万〜数十万円の積立が精一杯であることを示唆している。20年かけて使い切っても、総額は600万〜1,200万円程度になりがち。
不安②:教育費(子供1人1,000万円問題)
NISAの答え度:低〜中
教育費は使用時期が固定的(大学進学=17-18歳時点)。NISAの「長期保有で複利を得る」というロジックは、使用時期が不動産契約のように決まっている教育費とは相性が悪い。
大学入学直前に暴落が起きたら、泣く泣く損切りしなければならない。この「時期リスク」は、学資保険や定期預金では発生しない(利回りは低いが)。教育費においてNISAは主力にはなりにくい。サブとして、余裕資金での長期積立なら使える。
不安③:物価高(インフレと実質賃金の下落)
NISAの答え度:中
2024年以降、日本はインフレ局面にあり、実質賃金は目減りしている。現金の価値が相対的に下がるため、「現金以外で持つ」ことの意義は高まっている。NISAでインフレヘッジ資産(株式、REIT)を持つことは、この観点では合理的。
ただし、物価高が生活を圧迫する段階では、そもそもNISAに回せる余剰資金が少ない。物価高で苦しい人ほど、NISAの前に防衛費(現金1-2年分)を確保する方が先決になる。「困っている人ほどNISAの恩恵を受けられない」という逆説がここにある。
不安④:円安(外貨建て資産への欲求)
NISAの答え度:高
NISAで購入可能な投資信託には、米国株(S&P500)や全世界株(オルカン)が含まれる。これらは実質的に円資産から外貨資産へのシフトだ。eMAXIS Slim 全世界株式の純資産総額は10兆円を超え、NISA民の大半がこれらに資金を投じている。
結果として、新NISA経由で日本から海外への資金流出が発生している。日本総研の試算では、『新NISAで年最大3.9兆円の資金流出、対ドル6円の円安圧力』。実際、日経新聞は2024年6月に「家計の円売り、はや前年上回る 新NISAで1〜5月5.6兆円」と報じている。
皮肉なことに、円安への個人の防衛策が、集合的には円安を加速させるという構造がある。この点、英国ISA・韓国ISAが「国内投資型」を採用しているのと対照的だ(三菱UFJアセットマネジメント『英国版・EU版・韓国版の新ISAは国内投資型!?』)。
わしが円安対策でオルカン買うたら、わしが円安を悪化させとるってこと!?
個人の寄与は微々たるものだから、「あなたのせい」という話ではないわ。でも、2,696万口座の集合行動は無視できない規模。日本総研も大和総研も、資金流出が円安を加速させる構造を試算している。制度設計として、これは意図された副作用か、それとも想定外か——ここは学術的にも議論が続いている。
個人としては「自分の資産は守る」という判断が合理的だ。ただし、国家としてはこの集合行動が逆風になる。この個人の最適化と全体の最適化のズレこそが、NISA制度の隠れた論点だ。
国際比較 — 日本だけが「海外に流出する型」
4つの不安と制度の接続を見たところで、他国との比較を挟む。ここがNT Mediaらしい切り口である。
英国ISA(1999年4月開始)
- 年間投資枠:20,000ポンド(約380万円)
- 生涯枠:なし(無制限)
- 成人ISA保有残高総額:7,259億ポンド(約140兆円、HMRC Annual savings statistics 2024)
- 成人ISA口座数:約1,240万口座
英国ISAの歴史は27年に及び、日本の新NISAの「手本」として頻繁に言及される。ただし、英国ISAは英国株・英国債・英国の投資信託が中心で、国内投資型の性質が強い。
韓国ISA(2016年3月開始)
- 韓国ISAも国内株・国内債中心に設計
- 韓国の家計金融資産を韓国の産業成長に結びつけるパイプラインとして機能
米国 Roth IRA / Traditional IRA
- 年間拠出上限:7,000ドル(50歳未満)
- 所得制限あり(Roth IRAは年収208,000ドル超で拠出不可、2024年基準)
- Roth IRAは税引後拠出・非課税引出、Traditional IRAは税引前拠出・課税引出
- 米国株中心だが、米国は投資先として世界から資金が集まる側なので、そもそも「海外流出」問題が生じない
日本新NISA
- 投資対象に国内縛りがない——これが英国・韓国との決定的な違い
- 結果として、eMAXIS Slim 全世界株(オルカン)・S&P500 が主力になり、資金は米国株中心に流れる
この構造的な違いは、新NISAが「家計の資産形成」という目的と、「国内資本市場の活性化」という目的の両立に失敗していることを示唆する。大和総研は「国内投資枠」の新設を提案しているが(同コラム)、2026年時点で実装には至っていない。
英国と韓国はちゃんと「国内に金を回す仕組み」にしとるのに、日本だけ抜け穴があるってことじゃな。
「抜け穴」というより、制度設計時の選択だったのよ。日本の金融業界は外資系運用会社との競合を避けるために「自由な投資対象」を望んだし、利用者も「最適と言われる商品を買いたい」と望んだ。政治経済学的に、これ以外の選択はしづらかった。
ただし、この選択のツケは円安・実質賃金の目減りという形で、NISA利用者自身に返ってくる。自分が海外株を買うことで、日本から資金が抜け、円が弱くなり、輸入物価が上がり、自分の生活費を圧迫する——この循環を、個人ベースで切ることはできない。政策でしか切れない。
「暴落」という最大の心理要因 — 続編での深掘り予告
ここまで制度論として読んできたが、実際にNISAを運用する人々にとって最大の心理的ハードルは「暴落」だ。2024年8月5日、日経平均は1日で4,451円(-12.4%)下落し、「歴史的暴落」と呼ばれた。多くのNISA積立民がその夜SNSで「損切った」「何これ」と動揺を共有した。
しかし、制度設計上、新NISAは暴落を前提に組まれている。
- 無期限保有(売らなくていい)
- 生涯1,800万円の枠(何回でも積み立てられる)
- 非課税(含み損でも税金はかからない)
これらは、暴落時に「耐える」ための設計だ。ただし、制度が耐えられるように設計されていても、個人の心理が耐えられるかは別問題。この点は、本稿の続編で深掘りする。
関連記事:既存の家計防衛シリーズとして 『物価高とどう付き合うか — 価格上昇疲労の冷静な読み方』、『ステルス増税サバイバル — 国民負担率の構造』、『実質賃金はどこまで回復したか — 2026年春闘の本当の結果』 をあわせて読むと、NISAが家計防衛の「パーツの一つ」として相対化されて見える。
使いこなす側の座標 — 煽りではなく距離感を
ここまで読んできた読者に、本稿が提供したい物差しを整理する。
- 「NISAを始めるべきか」ではなく「何の答えとしてのNISAか」を問う。自分の不安(老後/教育費/物価高/円安)のうち、NISAが答えになるものとならないものを仕分ける。
- 年間数万〜数十万円の積立で十分。1,800万円の枠を「埋めなければならない」と考える必要はない。あくまで「使える枠」である。
- 商品選びは手数料(信託報酬)最優先。NISAは長期保有前提なので、年率0.1%の差が30年では大きな差になる。
- 現金・保険・iDeCoと役割分担。NISAは万能薬ではない。教育費は学資保険、短期資金は普通預金、老後の節税はiDeCo、というように。
- 暴落は必ず来る。来たときに売らないために、余剰資金で運用する。生活防衛費(生活費1-2年分)は必ず現金で確保する。
これらは投資助言ではなく、制度の性質から導かれる付き合い方だ。具体的な商品選びやポートフォリオ構成は、本稿では扱わない。本誌の役割は、判断の下限を揃えることにある。
「新NISA始めたほうがええ?」って聞かれても、「何の解決策としてなのか」次第ってことじゃな。
そう。老後資金なら道具として適切、教育費なら相性が悪い、物価高対策なら条件付きで有効、円安対策なら効くけど副作用もある——こう仕分けるだけで、「やるべきか/やめとくべきか」という二者択一から抜け出せる。
制度は万能薬ではない。個人の事情と制度の設計を突き合わせ、部分的に使う。それが大人の制度との付き合い方だ。「全部やる」も「全部やめる」も、実は思考停止だ。
次回予告:子記事2本で深掘り
本稿は「新NISAハブ」として、制度の意図と4つの不安を俯瞰した。続編として以下2本を準備中。
- 『老後2,000万円問題を原文から読み直す — 2019年報告書と2026年の現実、新NISAはどこまで答えになるか』(子記事1)
- 『新NISAで暴落が来たらどうするか — 長期投資の『耐え方』と制度設計の安全ライン』(子記事2)
各子記事から本ハブに戻るループで、新NISAの全体像を立体的に把握できるようにする予定。
関連:エネルギー・資源シリーズの 『日本に眠る「真の資源」3兄弟の実力ランキング』 や、オールドメディア信頼度シリーズの 『日本のオールドメディア信頼度2026』 も、構造分析の姉妹記事として参照されたい。
編集後記:NT Media も同じ市場の中にいる
NISA・投資信託・証券口座は、本誌のような広告収益型メディアにとって、もっとも単価の高い広告主層である。つまり、本誌がこの記事を書くインセンティブには、「読者の役に立つ」以外にも「広告収益の底上げ」が含まれる。この構造を隠すことはできない。
だから本稿では、個別商品名・個別証券会社名を推奨しない。「SBI証券がおすすめ」「eMAXIS Slimが最強」といった記述は一切入れていない。広告収益は Google AdSense の自動配信に委ね、本誌の編集判断と広告配信を分離する。これが、批判対象と同じ構造に堕ちないための、本誌なりの一線だ。
NT Media はこれからも、「構造を読む視点」を、煽りではなく判断のために提供する。読者がこの記事を読み終えたとき、「始めるべきか」より「何の答えとしてのNISAか」で考えられるようになっていれば、本誌の仕事は果たされたことになる。
参考文献・検証ログ
- 金融庁『NISA口座の利用状況』2025年6月末時点グラフ
- 金融庁同調査2025年3月末版
- 投資信託協会『2024年投資信託に関するアンケート調査』
- 2024年12月末調査
- 日本銀行『資金循環統計』
- 内閣官房『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版』
- 金融庁『資産運用立国実現プラン』2023年12月
- 金融庁『NISAの効果検証』税制EBPM専門家会合 2025年6月
- 報告書本体PDF
- 『新NISAの導入による影響に関する質問主意書』
- 『新NISAの「裏技?」のような制度と「国内投資枠」新設の提案』長内智、2024年2月
- 『「新NISA」は老後資金問題の解決策になりうるのか?』
- 『新NISAで年最大3.9兆円の資金流出、対ドル6円の円安圧力』
- 家計の円売り、はや前年上回る 新NISAで1〜5月5.6兆円
- 三菱UFJアセットマネジメント『英国版・EU版・韓国版の新ISAは国内投資型!?』
- HMRC Annual savings statistics 2024
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- 2026-04-18: 初稿公開。『新NISA ハブ』シリーズの旗艦記事。子記事(老後2000万円/暴落対策)は後日公開予定。
訂正履歴
- 現時点で訂正はありません。
参考資料
- 一次金融庁『NISA口座の利用状況』2025年6月末時点グラフfsa.go.jp
- 一次金融庁同調査2025年3月末版fsa.go.jp
- 参考投資信託協会『2024年投資信託に関するアンケート調査』toushin.or.jp
- 一次2024年12月末調査fsa.go.jp
- 一次日本銀行『資金循環統計』boj.or.jp
- 一次内閣官房『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版』cas.go.jp
- 一次金融庁『資産運用立国実現プラン』2023年12月fsa.go.jp
- 一次金融庁『NISAの効果検証』税制EBPM専門家会合 2025年6月mof.go.jp
- 一次報告書本体PDFfsa.go.jp
- 一次『新NISAの導入による影響に関する質問主意書』shugiin.go.jp
- 参考『新NISAの「裏技?」のような制度と「国内投資枠」新設の提案』長内智、2024年2月dir.co.jp
- 一次『「新NISA」は老後資金問題の解決策になりうるのか?』gentosha-go.com
- 一次『新NISAで年最大3.9兆円の資金流出、対ドル6円の円安圧力』jri.co.jp
- 参考家計の円売り、はや前年上回る 新NISAで1〜5月5.6兆円nikkei.com
- 一次三菱UFJアセットマネジメント『英国版・EU版・韓国版の新ISAは国内投資型!?』am.mufg.jp
- 一次HMRC Annual savings statistics 2024gov.uk