「今年は賃上げがあった」という話は聞いた。でも財布の中身が急に厚くなった気はしない。 その感覚、間違ってもない。正確に言えば「増えているが、物価も上がっている」だ。
2026年1月、厚生労働省の毎月勤労統計調査で実質賃金が前年同月比+1.4%となり、13ヶ月ぶりにプラスへ転換した。春闘では賃上げ率5%台が続く。数字だけ見れば「回復」に見える。だがその数字の奥に、もう少し複雑な話が入っている。
ニュースの概要
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年1月分結果速報」によると、実質賃金(事業所規模5人以上)は前年同月比+1.4%と、13ヶ月ぶりにプラスへ転換。現金給与総額は+3.0%だが、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+1.7%上昇しており、その差分がプラスとなった形だ。連合が2026年4月3日に発表した春闘第3回集計(4月1日時点)では、2,311組合・約220万人の加重平均賃上げ率は5.09%。前年同期比では0.33ポイント下回るが、5%超の高水準を維持している。
独自ファクトチェック・検証視点
「13ヶ月ぶりプラス(+1.4%)」は厚労省公式速報値(本系列)に基づく事実。ただし本系列は毎年1月に調査対象事業所の部分入れ替えとベンチマーク更新が行われる。月次の動向比較として適切な「共通事業所ベース」では同月の実質賃金は+0.2%にとどまる。連合の春闘集計(5.09%)は第3回集計時点の数値であり、最終集計ではやや変動する可能性がある。また、原油価格が高騰した場合、物価上昇が賃金上昇を上回り実質賃金が再びマイナスに転じるリスクがある点も留意が必要。
出典:厚労省 毎月勤労統計調査 2026年1月分速報
「13ヶ月ぶり」が意味すること
実質賃金のプラス転換は2024年12月以来、13ヶ月ぶりだ。 かつて4年間続いたマイナスの構造を考えれば、数字の上では確かに局面が変わっている。
ただし、「プラス」には条件がある。
厚労省の毎月勤労統計には、毎年1月に「本系列」と「共通事業所ベース」の2つの数字が出る。 本系列は1月に調査対象が入れ替わるため、前年比の比較基準が変わる。対して共通事業所ベースは「同じ事業所のデータを前年と比べた」数字で、月次トレンドをより正確に反映する。
今回、本系列が+1.4%に対し、共通事業所ベースでは+0.2%だった。
プラス転換は本物だ。ただし「体感が薄い」理由の一端は、この差にある。
春闘5%台の中身を読む
連合の2026年春闘第3回集計(4月1日時点)によると、加重平均賃上げ率は5.09%。 大企業・中小問わず、数字だけ見れば過去30年で最高水準に並ぶ動きだ。
ただし、この「5.09%」にも読み解くべき構造がある。
まず、大企業と中小企業の差だ。 今回の集計で、組合員300人未満の中小1,332組合の賃上げ率は5.00%と大企業並みの水準だった。これは連合加盟組合のデータであり、組合のない中小・非正規の職場が多数残っていることは留意が必要だ。
次に、有期・短時間・契約等労働者の数字だ。 236組合・約73万人のデータでは、時給ベースで+80.39円・賃上げ率6.61%。正規より高い伸び率に見えるが、絶対水準が低い層の小幅な改善が率として大きく出る構造でもある。

本当に生活は楽になるのか
内閣府の令和8年度政府経済見通しでは、2026年度の実質賃金上昇率は「+1%程度」と試算されている。
この数字が実現するための前提は「物価上昇率が賃金上昇率を上回らないこと」だ。 中東情勢の不安定化で原油価格が高止まりすれば、物価は再び賃金を追い越す可能性がある。エネルギー輸入依存という構造的リスクは今年も消えていない。
また、賃上げが「手取り」に直結しない問題もある。 社会保険料の引き上げが続く中、名目賃金が上がっても手取りは思ったほど増えないという状況は変わっていない。春から生活コストが全面的に上がっている環境でもある。
世論の空気感
世論の空気感
実質賃金が13ヶ月ぶりにプラスに転換した。春闘賃上げ率は5.09%で高水準を維持している。数字の上ではたしかに方向が変わった。だが「本系列+1.4%」の裏に「共通事業所ベース+0.2%」という実態があり、物価・社保・手取りを差し引きした後に何が残るかは個々の状況次第だぞ。プラス転換を「回復」と読むか「まだ序章」と読むかは、厚労省の速報より自分の給与明細を見てから判断するのが正しいんだな。
用語解説
実質賃金
名目賃金(給与の金額)を物価の変化で補正した数値。名目賃金が上がっても物価が同じ比率で上がれば実質賃金はゼロになる。
共通事業所ベース
毎月勤労統計で、調査対象事業所の入れ替えの影響を除くため、前年と同じ事業所のデータだけを比較した数値。月次の賃金トレンド把握に適している。
春闘(春季生活闘争)
毎年春に労働組合が使用者(会社)に対して賃金改定を求める交渉。連合が毎月集計を発表する。大企業から始まり中小・非正規へと波及するかが焦点。
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