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ポイントの有効期限は、使う人の行動を変えるのか? 失効が会計と税でどう扱われているか、公開資料で確かめた

2026年11月1日 By NTM Editorial
#ポイント#有効期限#失効#収益認識#家計
aiko
aiko

有効期限の近いポイントがあると、買う予定のないものまで買うてしまうことがあるじゃろ。あれは店にとっては、わしがうっかり期限を切らすほうが得なのか、慌てて使うほうが得なのか、どっちなのじゃ。

sa-tan
sa-tan

どちらが得かを直接示す公開資料は、今回の調査では見つかりませんでした。代わりに、会計基準と税のルールが失効をどう扱っているかは、原文で確認できます。そこから分かる範囲を、分かっていない範囲と分けて書きます。

会計も税も、「使われずに終わるポイントがある」ことを前提に作られている。ただし、その量が企業ごとにいくらなのかは、調べた範囲では公開されていなかった。

調べたのは、会計基準の原文、国税庁の通達、報道された事例、民間の調査、国際誌の論文の5種類だ。企業の決算資料から失効の実額を拾おうとしたが、今回は確認できなかった。公正取引委員会がポイントの有効期限そのものを問題にした資料も、見つけられていない。

会計は、「使われない分」を最初から織り込んでいる

企業会計基準委員会の適用指針第30号は、顧客が前払いした分のうち、使われずに終わる権利を「非行使部分」と呼ぶ(第53項)。そして、企業がその分を将来受け取れると見込む場合の処理を、次のように定めている。

表1 適用指針第30号が定める「非行使部分」の収益の認識(第54項)
企業の見込み収益を認識するとき
使われない分を、将来受け取れると見込む顧客が権利を使っていくパターンに比例して、少しずつ
受け取れるとは見込まない顧客が残りを使う可能性が極めて低くなったとき
注:項番号は2021年3月改正後の適用指針。ポイントそのものがこの項に当たるかは、付与の仕組み(値引きの範囲を超える重要な権利か)による。
出典:企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第30号」をもとに編集部作成。

表1のとおり、基準は「失効するかもしれない分」の存在を前提にして、その分の売上をいつ計上するかを決めている。使われないポイントは例外ではなく、計算式の中に最初から入っている。

aiko
aiko

そうすると、わしが期限を切らすかどうかは、店の帳簿の上では「見込み」の中に入っておるのじゃな。切らした人がおらんと、見込みのほうが外れることもあるのかのう。

sa-tan
sa-tan

見込みが外れた場合の扱いは、基準ではなく各社の見積り方法の問題になります。公開資料では、どの会社がどの程度の失効を見込んでいるかまでは確認できませんでした。

税のルールは、有効期限の日を一つの区切りにしている

税のほうはもう少し具体的だ。国税庁の法人税基本通達2-1-39の3は、ポイントを付与した時点で前受けにした金額を、ポイントが使われたときに利益として扱うのを原則としている。そのうえで、使われなかった分に区切りを設けている。

図1 通達2-1-39の3で、使われず未計上のポイントが利益に入る時点
付与の日
ポイントを付与。この時点の前受額が出発点になる
使われたとき
値引きされた分を利益に算入。失効すると見積もられる分も勘案する
有効期限の到来
使われずに残った前受額を、その事業年度の利益に算入
付与から10年
期限がなくても、10年が経った日を含む事業年度の終わりに、未使用分を利益に算入
注:このほか、付与した年度ごとに管理しなくなったとき、会社があらかじめ定めた基準(未行使の割合が一定になった等)に達したときも、同様に区切りとなる。失効の見積りには、過去の失効実績を基礎にした合理的な方法と、算定根拠の書類の保存が必要とされている。
出典:国税庁「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)の趣旨説明」(平成30年5月30日付)をもとに編集部作成。

ここで読み取れるのは、有効期限が「消費者への案内」であるだけでなく、会社の側にとっても、使われずに残った分を利益として確定させる日付になっていることだ。期限の日付は、利用者には「使い切る締切」、会社には「未使用分の整理の日」という二つの顔を持つ。

ただし通達は、期限のないポイントにも10年の区切りを置いている。期限を設けないことで失効を避けても、会計と税の上では未使用分がいつまでも残り続けるわけではない。

失効した人は、どれくらいいるのか

では、実際に失効させる人はどれくらいいるのか。企業別の数字は見つからなかったが、民間の調査が一つあった。

関連: 「賞味期限」と「消費期限」、いつも混同するんじゃが、そもそも何がどう違うん?

統計指標
失効の経験あり 35.9%(カードのポイント)/46.9%(マイル)
定義:失効させた経験があると答えた人の割合。失効経験者の平均額は、カードのポイントで約2,742円相当、マイルで約5,081円相当。
調査:プレミア・クロスバリュー(ポイント交換サービス「交換.jp」の提供会社)、2021年12月、全国のカードまたはマイレージ利用者1,236人。
読み方:割合の分母が全回答者か各利用者群かは、報道の記載からは分からない。サービス提供会社による調査で、全国の失効額を「1389億円相当」とした推計の計算方法も、記事からは再現できない。

つまり、カードの利用者の3人に1人強、マイルの利用者の2人に1人弱が「切らしたことがある」と答えている。それが調査の範囲で言える全部だ。失効は一部の人の失敗ではなく、利用者の相当数が経験することとして観測されている。一方で、平均額が数千円規模だという点は、1回あたりの損が小さいことも意味する。

aiko
aiko

数千円ならわしも切らしたことがあるのう。じゃが、小さい額だからこそ、期限が来るたびに焦って買い足す人もおるのではないか? 結局それで損をしておるかもしれんぞ。

sa-tan
sa-tan

その点は、この調査では測れていません。失効した額は数えていますが、期限前に慌てて使って余計に買った額は数えていないからです。

「期限切れ」と「儲け」は同じ話ではない

ここまで読むと、期限が切れれば会社が儲かると考えたくなる。ただ、報道された一つの事例が、それを単純にできないことを示している。

JR東日本は2024年5月16日、2014年12月20日に発売した「東京駅開業100周年記念Suica」について、一度も使われていないカードを2026年3月31日に一律で失効させると発表した。乗りものニュースによると、2016年3月頃までに計427万枚が発送され、2024年3月末時点で約250万枚が未使用だった。1枚目に1,500円がチャージされているので、単純計算で約37億5,000万円分(預かり金を除く)が使われていない計算になる。

定義
カードの失効:そのカードが使えなくなること。
失効益:使えなくなった分が、会社の収益になること。
記事の記載では、今回のSuicaは失効したカードは回収され、チャージ残高と預かり金500円が返金されるとされている。

つまり、カードが「失効」しても、残高が戻ってくる仕組みなら会社の収益にはならない。この記事には、失効分が収益になるかどうかの記述はなく、ここから先は分かっていない。ポイントは、買い物の副産物として付与され、現金に戻らないものが多い。「期限が切れる」ことの意味は、ポイントの種類や規約によって変わる。

期限は行動を変えるのか──見つかった研究は1本

「期限が行動を変えるのか」を直接測った国内のデータは、今回は見つからなかった。近いものとして、Goić、Montoya、Troncosoが2025年に国際誌 International Journal of Research in Marketing に発表した論文がある。

チェックリスト 論文のアブストラクトから確認できたこと/できないこと
✅ 対象は大手の地域航空会社のデータで、失効するポイントの割合(ブレイクエージ)の推定方法を提案した
✅ 失効する割合は、顧客によっても市場によっても大きく違うと報告している
✅ 失効率をそろえるための業界の定番の工夫に対して、失効はかなり動きにくいと報告している。また、高額な特典を手に入れやすくするより、使う回数を増やしてもらうほうが失効を減らす効果が大きいと述べている
❌ 日本の小売やカード会社のポイントにそのまま当てはまるかは、論文からは言えない(航空会社の例のため)
❌ 期限直前に使う量や、そのとき追加で買う額は、アブストラクトの範囲では確認できない(本文は未確認)
sa-tan
sa-tan

この論文は、アブストラクトしか読めていません。ですので、ここから言えるのは「失効の量は人によって大きく違う」という点までです。期限が人を動かすかどうかは、別の研究が要ります。

この記事も、「失効益」という言葉を前に出せば読まれやすいと分かって題材を選んでいる。だから、数字が見つからなかった部分を、見つからなかったと書いた。ポイントの期限をめぐる話は、「得をする」「損をする」の物語にしやすい。だが、公開されている資料から言える範囲は、そこまで広くない。

aiko aikoが飲み込んだところ

期限の日は、わしの締切であって、店にとっては帳簿を片づける日でもあるのじゃな。……ならば慌てて買う前に、一晩だけ置こうと思う。去年、期限間際の札で買うた干し柿は、結局ひとつも食べんかったからのう。


主な参照資料:

the NTM Core Engine 参考文献・検証プロセス
S 90pt
PENDING Audit PENDING_MANUAL_REVIEW
1 一次情報
0 二次情報
参考文献・検証ログ 5件
Score Breakdown 90pt
Traceability 35/35
本文から根拠へ辿れる度合い
Diversity 25/25
出典の広がり
Evidence 25/25
根拠の強さ
Domain Bonus 5/15
一次資料・公的資料の補強
the NTM Core Engine review note

参照は 5 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。

制作の流れ
STEP 1

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参照 5 本。一次情報 1 本 / 二次情報 0 本を当てて、本文の芯を固める。

PENDING_MANUAL_REVIEW

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STEP 3

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参考資料