世の中

炎上って、結局何日で収まるんじゃ? 寿命を測ったデータを探してみた

2026年10月20日 By NTM Editorial
aiko
aiko

ニュースで「炎上」を見るたびに思うんじゃがの、あれは何日で収まるもんなんじゃ? 3日か、1週間か。測った人はおらんのかのう。

sa-tan
sa-tan

先にお伝えすると、日本で「炎上の継続日数」を測った公開データは、今回探した範囲では見つかりませんでした。代わりに、「世の中の注目が何時間で減るか」を測った研究はあります。炎上そのものではないので、そのぶん差し引いて読む形になります。

NTM 世の中ファイル

炎上の「日数」は見つからず、注目の寿命は「時間」で測られていた

炎上の継続日数を測った公開データは、今回の調査では確認できなかった。確認できたのは、ニュース投稿サイトの記事の半減期(2006年)、Twitter の人気ハッシュタグが上位にいた時間(2013〜2016年)、炎上に書き込む人の割合(山口真一氏の調査)の3つ。

Digg の記事の注目の半減期(2006年・約3万本) 69分
Twitter 人気ハッシュタグ上位50位の平均滞在(2013年→2016年) 17.5時間→11.9時間
炎上に書き込んだことがある人(山口真一氏の調査) 1.1%(過去1年は0.5%)
シエンプレが数えた2024年5月の炎上件数 84件

注目は急に減る

Digg では、記事がトップページにいるのは1〜2時間ほど。3時間後には新しさの指標が0.03未満まで下がった。

減る速さは上がっている

Twitter の人気ハッシュタグが上位に居続けた平均時間は、3年で約3割短くなった。

燃やす人は少ない

炎上に書き込んだ経験があるのは全体の1.1%。1つの炎上でも書き込むのは0.4%程度の事例がある。

日数のデータは無い

炎上の件数を月ごとに数える調査はあるが、何日続いたかは公表資料に載っていなかった。
NT Media 結論
まず、注目が減る速さを測った古典的な研究から見ていく。

注目は何時間で減るのか ── Digg の記事は半減期69分

炎上の寿命を考える入口として、まず「みんなの注目が何時間で冷めるか」を測った研究を見る。Fang Wu と Bernardo Huberman は、ニュース投稿サイト Digg の利用者約100万人の行動を調べた。対象は2006年に人気になった29,864本の記事だ(Wu & Huberman, 2007, PNAS 104(45))。

論文によれば、記事がトップページにいるのは通常1〜2時間で、注目の半減期は69分と推定されている。新しさを表す指標は最初の数時間で急に下がり、3時間後には0.03を下回った。

表1 Wu & Huberman (2007) が報告した Digg の注目の減り方
項目報告された値
分析した記事数(2006年)29,864本
トップページにいる期間1〜2時間
注目の半減期69分
新しさの指標(3時間後)0.03未満
注:対象は Digg に載った人気記事で、炎上した投稿ではない。色を付けた行が、本稿の主題に近い値。
出典:Wu & Huberman (2007) PNAS 104(45) をもとに編集部作成。

ここで注意したいのは、これは炎上ではなく、ニュース記事への票が減る速さの研究だという点だ。2006年の Digg と、今の SNS では仕組みも利用者も違う。炎上にそのまま当てはめることはできない。

aiko
aiko

69分とは短いのう。ならば炎上も一晩で消えそうなものじゃが、現実には何日も話題が続くことがあるじゃろ。あの差は何なんじゃ?

sa-tan
sa-tan

そこが、今回のデータで言い切れない部分なんです。Digg は「新しい記事に票が入る」仕組みで、同じ話題の続報や再投稿が起きるかどうかは、この研究の範囲に入っていません。炎上が長引く理由が続報なのか、別の媒体への飛び火なのかは、私たちには測れていません。

人気の話題が上位にいる時間は、短くなっていた

次に、SNS 上の話題を扱った研究を見る。Philipp Lorenz-Spreen らは、Twitter・Google Trends・Reddit・Wikipedia など複数のデータで、話題への注目が上がって下がるまでの時間を調べた(Lorenz-Spreen et al., 2019, Nature Communications 10)。

Twitter では、上位50位に入った人気ハッシュタグがそこに居続けた平均時間が、2013年の17.5時間から2016年には11.9時間まで短くなった。この間、上位50のハッシュタグを含むツイートは、週あたり約200万件から約400万件へ増えている。

図1 Twitter 人気ハッシュタグ(上位50位)の平均滞在時間
2013年
17.5時間
2016年
11.9時間
注:棒の長さは2013年を100%とした比率(11.9÷17.5≒68%、編集部計算)。約3割の短縮。対象は2013〜2016年の Twitter のハッシュタグで、日本の炎上ではない。
出典:Lorenz-Spreen et al. (2019) Nature Communications 10 をもとに編集部作成。

論文は、この短縮を「流れるコンテンツの量が増え、限られた注目を奪い合う速さが上がったため」というモデルで説明している。話題の寿命は、話題の中身よりも、周りにどれだけ他の話題があるかで縮むというのが論文の主張だ。ただしモデルによる説明であり、2016年より後のデータはここでは確認していない。

sa-tan
sa-tan

2013年から2016年で、上位にいる時間が17.5時間から11.9時間になっています。同じ期間にツイート量は約2倍に増えているので、「話題が多すぎて一つ一つが短命になる」という説明は、数字の動きとは矛盾しません。

aiko
aiko

ほう。じゃが、ハッシュタグが上位におる時間と、炎上が燃えとる時間は同じと言ってよいのか? わしは違う気がするんじゃがのう。

sa-tan
sa-tan

おっしゃるとおり、違うと思います。ハッシュタグの順位は「その瞬間に何件書かれたか」だけを見ていて、批判された本人がその後どうなったかや、後から検索で見に来る人の数は入っていません。なので、ここでは「話題の注目は思ったより早く冷める傾向がある」までが言える範囲です。

燃やしているのは、ごく一部の人

寿命の話から少し離れて、炎上に書き込んでいる人の数を見る。国際大学GLOCOM の山口真一氏の調査を紹介した記事(ビジネス+IT、2016年6月29日付)によると、炎上に書き込んだことがある人は過去の全期間で1.1%、過去1年に絞ると0.5%だった。東京オリンピックのエンブレム問題でも、書き込んだのは約0.4%だったと同記事は紹介している。

同じ記事は、「東大美女」というキーワードのツイートを例に挙げている。該当するツイートは10,641件で、容認が23.6%、中立が60.3%、批判は12.5%にあたる1,326件だった。

図2 批判ツイートを書いた人の書き込み回数の内訳
87%
13%
1回だけ書いた人
2回以上
注:2回以上のうち、3回以上書いた人は全体の2.8%。記事は、批判ツイート1,300人あまりに2.8%をかけて、執拗に書き込む「攻撃者」を約37人と見積もっている。この調査の対象人数と時期は、記事には明記されていない。
出典:ビジネス+IT(2016年6月29日付)をもとに編集部作成。

この数字は、炎上の寿命を直接は語らない。ただ、タイムラインを埋め尽くして見える炎上でも、批判を書いた人は1,300人あまり、繰り返し書く人は約37人という見積もりが、この例にはある。火が見えているのと、燃やしている人が多いのとは別の話になる。

日本の炎上は、件数は数えられても日数は書かれていない

最後に、日本で炎上をどう数えているかを見る。シエンプレ株式会社は一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所と共同で、炎上を月ごとに集計して公表している。2024年5月(5月1日〜31日)は84件で、炎上した主体の内訳は著名人37件(44.0%)、法人等31件(36.9%)、一般人13件(15.5%)、メディア3件(3.6%)。内容別では「特定の層を不快にさせる行為」が65件(77.4%)で最多だった(発表日は2024年7月10日)。

表2 2024年5月の炎上84件の内訳(炎上した主体別)
主体件数割合
著名人3744.0%
法人等3136.9%
一般人1315.5%
メディア33.6%
注:色を付けた行が最多。この発表資料には、1件あたりの継続日数の記載はなかった。
出典:シエンプレ/デジタル・クライシス総合研究所「5月の炎上分析データ」(2024年7月10日発表)をもとに編集部作成。

この発表資料には、1件の炎上が何日続いたかという項目は載っていなかった。他の月の資料や有料レポートには載っている可能性があり、「存在しない」と断定はできない。本稿が言えるのは、無料で読める範囲では確認できなかったところまでだ。

aiko
aiko

件数は毎月数えとるのに、何日続いたかは書いとらんのか。数えやすいものだけが数字になっとるんじゃのう。

Zash
Zash

当事者にとって大事なのは、日数より「検索すると出てくるかどうか」だ。注目が半日で冷めても、1年後に名前を検索されたら記事が出る。冷めるのが速いことと、本人が楽になることは別の話だ。

結局、何が言えて、何が言えないのか

表3 今回の調査で言えること・言えないこと
問い確認できたこと確認できなかったこと
注目は何時間で冷めるかDigg の記事は半減期69分(2006年)今の SNS・日本語圏の炎上での値
話題の寿命は変わったかTwitter の人気ハッシュタグは17.5時間→11.9時間(2013→2016年)2016年以降の推移
誰が燃やしているか書き込み経験は1.1%、過去1年は0.5%調査の詳しい手法(紹介記事のみ確認)
炎上は何日続くか月ごとの件数は公表されている継続日数の公開データ
注:「確認できなかった」は、編集部が無料で読める資料を調べた範囲での話で、存在しないことの証明ではない。
出典:本記事の各節に同じ。
aiko aikoが飲み込んだところ

「何日で収まる」と聞かれても、答えられるデータは見つからんかったのじゃ。じゃから、次に誰かが燃えとるのを見たら、「書いとる人は何人おるんじゃろ」と数えてから口を開くことにする。わしも、人の噂話に3回ほど口を挟んだせいで大ごとにしてしもうたことがあるでのう。

NTM ニュース整理

この記事の立場

この記事は「炎上の寿命」という、検索されやすい問いを入口にしている。ところが調べた結果は「日数のデータは見つからなかった」という答えで、読者が期待した数字は出せていない。分からないことを分からないと書く道を選んだが、見出しの引力に乗って読まれようとしている点では、炎上を拡げる側のメディアと同じ位置に立っている。

ソース

the NTM Core Engine 参考文献・検証プロセス
A 78pt
PENDING Audit PENDING_MANUAL_REVIEW
2 一次情報
0 二次情報
参考文献・検証ログ 4件
Score Breakdown 78pt
Traceability 28/35
本文から根拠へ辿れる度合い
Diversity 15/25
出典の広がり
Evidence 25/25
根拠の強さ
Domain Bonus 10/15
一次資料・公的資料の補強
the NTM Core Engine review note

参照は 4 本あります。監査はまだ保留で、公開前の確認が残っています。

制作の流れ
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参照 4 本。一次情報 2 本 / 二次情報 0 本を当てて、本文の芯を固める。

PENDING_MANUAL_REVIEW

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更新履歴

  • 2026-10-10: 初稿作成(自動起稿レーン・装填在庫)

訂正履歴

  • 現時点で訂正はありません。

参考資料